その企業は、ダンス用ドレス生地の卸売業として創業し、20年の業歴の中で卸売の他に小売店やダンススタジオも展開するようになっていました。一時は映画「Shall we ダンス?」のヒットなどでダンス人口が増加し、同店の業績も大きく向上した時期がありましたが、近年は売上低下が頭痛の種になっていました。
そこで販売促進を強化するべく、小規模事業者持続化補助金を活用することとし、応募のための計画書を作成することにしました。そのご支援を弊社が行い、結果として採択されたわけですが、どのようにしてこのダンス用品販売店が、採択レベルの計画書を作成していったのかをご紹介していきます。 今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分、「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<経営計画>「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を見ていきます。
1.「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」記入の仕方
(1)当欄がある理由を認識する
弊社が考える中小企業の戦略における鉄則は「強み」を活かすことです。私たちは、どうしても自社に足りないこと、得意ではないことに目が向いてしまい、それを改善しようとしがちです。
それを否定はしませんが、そんな弱みも自社の特徴だと捉え、弱みの改善ではなく、強みの強化に注力することは、好きこそものの上手なれではありませんが、効果は出やすいと考えています。
よって、まずは自社の強みを認識することが重要だと考えており、その強みをたくさん見出すことは、強化するべき強みの選択肢が豊富になることを意味します。そのために当欄があると考えています。
(2)当欄を切り分ける
当欄のタイトルは「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」ですが、これをまとめて書こうとすると、冗長になりがちなので、弊社では、まず「自社の強み」と「自社の提供する商品・サービスの強み」に切り分けることをお勧めしています。
ただし、切り分けさえすれば良いというものではなく、「強み」を記載する必要があります。そこで「強み」を定義する必要がありますが、弊社ではこれを「顧客に価値を提供でき、競合より優れている経営資源」としています。
なお、前回のコラムで、同店は競合を見出すことができなかったことを述べました。よって、今回の事例では、強みを「顧客に価値を提供できる経営資源」として記載していただきました。
(3)「自社の強み」「自社の提供する商品・サービスの強み」を切り分ける
上述の通り、強みは経営資源ですが、経営資源は「人」「物」「金」「情報」から構成されます。よって、この4視点から「自社の強み」を洗い出しますが、「物的資源の強み」に自社商品の強みを書いてしまうと「自社が提供する商品・サービスの強み」が書けなくなってしまう点に留意することが必要です。
また、「自社の提供する商品・サービスの強み」は「商品の強み」と「サービスの強み」に切り分けていただきました。なお、切り分けること自体や、そのグルーピングが重要なのではなく、切り分けることで視点の多様性を確保し、多くの強みを見出すことが重要と考えています。
以上を踏まえて記載していただいた内容は概ね以下となりました。
【自社の強み】
①人的資源の強み
- 当社代表は○○という実績があり、高い技術力を保有している。
- 世界各国のダンス講師との親交を通じ、ダンスの技術を磨いており、それを自社の外部委託講師に伝授し、ダンス技術の向上に結びつけている。
- ◎◎の業績を持つ外部ダンサーと講師委託契約を締結している。
②物的資源の強み
- ダンススタジオは●●駅直結でありアクセスが良い。
- ダンススタジオにショップが併設しており、スタジオの受講生が立ち寄り易い。
③財務的資源の強み
- 借入金は会社設立以来1度も滞りなく返済している。
- 昨年から経費削減を強化した為、△年後に借入金完済の目途がついている。
④情報的資源・ノウハウの強み
- 人脈を通じたスタジオにショップの商品を委託で置いており、販売が促進されている。
- 定期的にパーティーを開催し、当社の超有名選手がパーティーのプロデュースをすることで、受講生の評判が高く、固定化が促進されている。
- 経理関係はシステム化が進んでおり、情報がオープンになっている。
【自社の提供する商品・サービスの強み】
①商品の強み
- ショップの展示ドレスは世界各国一流ブランドのもののみを扱っている。
- 衣装用の生地は▽▽メーカーの1つである、▲▲社と日本独占販売の契約をしており、希少価値・品質が高い。
②サービスの強み
- 既製品でも自社であらゆるお直しが可能である。
このようにして「2.顧客ニーズと市場の動向」を記載していただきましたが、次回は「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を見ていきます。
2.小規模事業者持続化補助金の申請書類作成をサポートします
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