その企業は、ダンス用ドレス生地の卸売業として創業し、20年の業歴の中で卸売の他に小売店やダンススタジオも展開するようになっていました。一時は映画「Shall we ダンス?」のヒットなどでダンス人口が増加し、同店の業績も大きく向上した時期がありましたが、近年は売上低下が頭痛の種になっていました。
そこで販売促進を強化するべく、小規模事業者持続化補助金を活用することとし、応募のための計画書を作成することにしました。そのご支援を弊社が行い、結果として採択されたわけですが、どのようにしてこのダンス用品販売店が、採択レベルの計画書を作成していったのかをご紹介していきます。
今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分、「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<補助事業計画>Ⅰ.補助事業の内容「4.補助事業の効果」を見ていきます。
なお、当コラムでは<補助事業計画>のうち、「1.補助事業で行う事業名」は公序良俗に反しない限り、30文字以内にまとめるだけで済むという認識であること、「3.業務効率化(生産性向上)の取組内容」は任意記入であることから解説を割愛しています。
1.「補助事業の効果」記入の仕方
(1)効果を3方向から検証する
補助金を使うとどのような効果が見込めるのかを書く当欄において、【自社の効果】だけを記載するのは片手落ちと言えます。
自社の業績が拡大するという効果が見込めるのは、顧客に価値を提供しているからであり、【顧客の効果】を記載すると説得力向上が期待できます。
また、補助金の財源は税金ですから、同社を利用しない方の税金も同社の受け取る補助金として使われる可能性があります。そのような公的資金を使う者として【社会的な効果】も記載するとさらに説得力向上が期待できます。
(2)各効果を切り分ける
効果は数値で表すことのできる<定量的効果>と、数値で表すことが困難な<定性的効果>に分けることができます。【自社の効果】として<定量的効果>は達成度が分かるため、次の打ち手を構築する材料として活用できます。よって、可能な限り<定量的効果>の記載をお勧めしています。
また、同社の顧客は、ドレス生地を購入してドレスを制作する<事業者>と、ドレス含むダンス用品を購入する<消費者>の2パターンがありますので、【顧客の効果】として、両者の効果を切り分けて記載することとしました。
以上を踏まえて、同社が記載した「4.補助事業の効果」は概ね以下となりました。
【自社の効果】
- ○○万円から●●万円の売上増を見込むことができる。
- 営業活動の効率化を図ることができる。
【顧客の効果】
- 事業者の効果として、高級生地を使って質の良いドレスを作ることができ、販路拡大に繋げることが可能である。
- 消費者の効果として、希少・高品質なダンス用品を身にまとうことによる満足感を得ることが可能である。
【社会的な効果】
希少・高品質なダンス用品の普及により、ダンスを嗜む人口が増加し、業界全体の活性化につながる。
なお、これに続く様式3-1補助事業計画書②「Ⅱ.経費明細表」「Ⅲ.資金調達方法」の記載に関する留意点は、以下のコラムをご覧下さい。
このようにして、同社は無事採択されましたが、取扱商品の専門性が高く、ニッチな市場を対象にしていることから、どのような事業展開をしているのかを示す「1.企業概要」、外部環境を示す「2.顧客ニーズと市場の動向」がポイントとなったと感じています。読み手に伝わりやすくする工夫が必要な事例と言えるでしょう。
なお、同社の計画書作成事例のバックナンバーは以下となりますのでご参考にしてください。
2.小規模事業者持続化補助金の申請書類作成をサポートします
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