同店は、家電量販店の下請事業者として、エアコンの設置工事を手掛ける家族経営の電気工事店ですが、さらに収益性を向上させるために、自店でエアコンを販売し、そのエアコンを自店で設置工事するという、最終ユーザーとの直請取引を拡大するための取組を強化することとしました。
この新規事業を展開するにあたって、ホームページ、チラシ、ノベルティマグネット(冷蔵庫などにメモ留めとして使っていただく告知用のマグネット)を作成することとし、その費用の一部を小規模事業者持続化補助金で調達することとしました。
そして、同店における当補助金の計画書策定に関するご支援を弊社が行い、無事採択されたわけですが、同店が採択される計画書をどのように作成したのかをご紹介します。今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分、「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<補助事業計画>Ⅰ.補助事業の内容「4.補助事業の効果」を見ていきます。
なお、当コラムでは<補助事業計画>のうち、「1.補助事業で行う事業名」は公序良俗に反しない限り、30文字以内にまとめるだけで済むという認識であること、「3.業務効率化(生産性向上)の取組内容」は任意記入であることから解説を割愛しています。
1.「補助事業の効果」記入の仕方
(1) 整合性を意識する
同店が事前に記載してきた内容の中には、自社の効果として3年間で見込める各年度の売上・粗利が記載されていました。さらにはその売上・粗利の内訳として、エアコンやLED照明などの商品名、エアコン工事や照明交換工事などの工事名、各々の数量、粗利といった明細が記載されていました。
ですが、この明細は1年後に関する内容のみであり、2、3年後の明細は記載されていませんでした。3年間の売上・粗利を記載し、それをさらに細かく記載することは読み手の理解が進みますし、単に掲げた効果ではなく、細部まで検証した効果であることがうかがえますが、それが1年後の明細しかないことは、非常にもったいなく感じます。
よって、2、3年後に見込める販売数量を商品名・工事名ごとに記載していただき、それにもとづく売上高、粗利も記載していただきました。しかし、これらはあくまでも「自社の効果」のみを示しており、それ以外の効果も記載する必要があります。
(2) 見出しと内容の整合性をとる
商売は「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」が重要であることはかつて近江商人が大事にしていたモットーでした。同店は「売り手よし」の観点から上記の「自社の効果」を記載したわけですが、「世間よし」の観点から下記の「社会的な効果」を概ね以下の内容で記載をしてこられました。
温暖化が進む中、高まっているエアコン工事の需要は、○月~○月という特定の時期に集中するため、当社を含め業界全体において、即時対応が出来ない状態が続いている。「◎◎」という経営方針のもと事業を展開することにより、需要が分散されると共に、安価でのエアコンの設置が可能となることから社会性を有するものと判断している。
「需要が分散されること」は自社の効果であり、「安価でのエアコン設置」は顧客の効果です。よって見出しは「社会的な効果」であってもその内容は見出しに沿ったものになっていないということです。
今回の補助事業はエアコンの販売促進ですから、「高齢者の家屋内における熱中症が防止できる」「夏場を健康に過ごすことができ、医療費削減に繋がる」といった内容が「社会的効果」と言えるのではないでしょうか。
(3) 「補助事業の効果」以外記載しない
同店は当欄に「経営計画との関連性」という見出しを設け、概ね以下の内容を記載してこられました。
下請け工事に依存した結果、収益性の低下を招いているが、これを打破するには、当社の営業形態を一新する必要がある。そのための足掛かりとして、当社の強みである接客力を活用したエアコンという需要の高い製品に着目した。
当欄は「補助事業の効果」を記載する欄であり、上記のような自店の方針を記載するのであれば、<経営計画>の「4.経営方針・目標と今後のプラン」に記載することとなります。
同店は、その欄に書くべきではない内容を盛り込みすぎるきらいがありました。これは、それだけ事業にかける想いが強いということなのでしょうが、度を過ぎると読み手を混乱させ、述べたいことが伝わりにくくなるリスクを発生させます。本当にその欄に書くべきか否か、自店と距離を置いた目線で検証する必要がある事例と言えるでしょう。
なお、自店と距離を置いた目線で検証するための手法は以下のコラムを参考にして下さい。
また、「補助事業の効果」より前の項目については以下のリンクを参考にしてください。
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