同社は、家族経営の不動産会社であり、賃貸・売買物件の紹介を主たる事業としていました。かつては、店頭や担当者からの情報を元に物件を探す顧客がほとんどでしたが、昨今は、予めスマートフォンで物件情報を検索し、その物件を見るために来店する顧客が多くなってきており、同社はインターネットでの情報発信を強化する必要性を感じていました。
そこで、同社は物件をユーチューブの動画、パノラマ画像、VR(Virtual Reality:仮想現実)で紹介できるホームページを立上げようと考えました。特にVRでの紹介はホームページの閲覧者が、あたかもその物件の内部にいるような状況で見たいところを見ることができるような仕組みであり、今回立ち上げるホームページの大きな特徴となっています。
同社はこのホームページを立ち上げるにあたって、その費用を小規模事業者持続化補助金で調達することとしました。そこで、同社における当補助金の計画書策定に関するご支援を弊社が行い、無事採択されたわけですが、採択される計画書を同社がどのように作成したのかをご紹介します。
今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<経営計画>「4.経営方針・目標と今後のプラン」を見ていきます。
1.「経営方針・目標と今後のプラン」記入の仕方
(1) 3つの見出しを設ける
小規模事業者持続化補助金の申請支援をしていて、強く感じることは、書いている場所や内容が不適当なパターンが多いということです。
実際問題、計画書には何でも書けてしまいますので、一定の制約を設けないと上記のパターンに陥る可能性が高まり、結果として採択から遠ざかってしまいます。そこで、見出しを設けることをお勧めしていますが、この見出しも自由に設定できてしまうという罠が控えています。
よって、各欄のタイトルに沿った見出しの設定をお勧めしており、今回であれば【経営方針】【目標】【今後のプラン】という見出しが妥当と判断できます。以下でそれぞれの見出しに応じ、どのような内容を記載したのかを示します。
(2) 「やらない」という方針も妥当
同社の【経営方針】として特徴的だったのは、記載したいくつかの経営方針の中に「○○をしない」という内容があったことです。往々にして事業の拡大に意識が向くあまり、「●●をする」という方針を設定しがちですが、利益を確保するために「○○をしない」という経営方針は充分に妥当性があると言えます。
というのも、公的資金である補助金を得るためには、納税額の拡大が見込めることが必要であり、そのためには利益の拡大が当然に必要であるからです。
(3)測定可能な目標を期限とともに設定する
同社が記載した【目標】は、問い合わせ件数・売上高・税引後利益であり、どれも測定が可能なももでした。例えば「顧客満足度の向上」「知名度の向上」「地域貢献度の向上」といった目標は測定が困難であり、そのことは達成度が不明であるということです。
よって、達成度に基づいた次の打ち手が見出しにくくなり、自社の成長に寄与する目標とはなりにくいことを意味します。よって、可能な限り同社のように測定可能な数値で表すことのできる目標の記載をお勧めします。
また、「いつまでに」という期限がなければ、達成度の測定時期が不明です。同社の場合は「3年後」という期限を設けました。
(4) 2つの計画を作成する
【今後のプラン】に関して、同社は「行動計画」と「売上・利益計画」を盛り込みました。「行動計画」は、1年を4分割した3年間の時間軸を横軸に、3年間でとるべき行動を縦軸において、どの時期に何を行うのかを下図のように表形式で示しました(戦時中の教科書みたいになっていますがご容赦ください)。
また、「売上・利益計画」は、やはり3年間のスパンをとり、その間の売上、費用、利益を直近の損益計算書に基づいて下図のように作成し盛り込みました。
その上で、売上の根拠として何がいくらでどの程度売れる見込みなのかという補足説明も加えました。
このようにして「4.経営方針・目標と今後のプラン」を記載しましたが、次回は「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<補助事業計画書>Ⅰ.補助事業の内容「2.販路開拓等(生産性向上)の取組内容」について見ていきます。
2.当コラムの解説動画
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