同社は印刷を主な事業としていますが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、取引先の集客が落ち込んだことにより、同社が手掛ける印刷の需要が減少し、業績が低下してしまいました。
そこで、同社は業績の回復に要する費用の一部を小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>で調達しようと考え、計画書を作成し、申請したところ、無事採択されました。そこで同社が作成した計画書から、なぜ採択されたのかを検証し、どのように計画書を書けば採択の可能性が高まるのか検討していきます。
下図は当補助金申請時に提出する「【様式1】経営計画および補助事業計画」の構成ですが、今回のコラムでは、下図の赤枠部分<経営計画>「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」の書き方を見ていきます。なお、当コラムの内容は2022年2月3日時点の情報に基づいています。
1. 持続化補助金に採択された印刷業者の計画書の書き方
持続化補助金に採択された印刷業者の計画書の書き方【新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編】(1)対策を2つに切り分ける
同社は、既に取り組んでいる対策として感染リスク低減の対策と収益増加の対策を述べておりました。多くの計画書では感染リスク低減の対策のみを採り上げ、検温・消毒・マスク着用・換気の徹底などを記載しがちです。
もちろん、このような感染リスク低減の対策は、コロナ禍で必要なものではありますが、これらは他の事業者と同じ内容になりがちです。補助金に採択されるには、計画書の完成度を高め、他の事業者よりも優れたものにすることが必要ですから、感染リスク低減の対策に加えて、収益増加の対策を述べることで、自社なりのオリジナリティを出し、差別化を図ることが有効と言えるでしょう。
よって、感染リスク低減の対策だけでなく、収益増加の対策も記載したことが、同社が採択を引き寄せた要因のひとつと考えられます。
持続化補助金に採択された印刷業者の計画書の書き方【新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編】(2)コロナを味方にした対策を述べる
コロナ禍で業績にネガティブな影響を被った事業者は多いはずですが、コロナ禍になったことで需要が増大した商品もあります。具体的には、マスク、フェイスシールド、消毒液などが挙げられます。
同社は、収益増加の対策としてそのような需要が増大した商品を用いて、同社の印刷技術を活用した新製品を開発し、市場へ投入しているという内容を記載していました。
事業経営は環境変化への対応が重要と言われますが、同社のように、外部環境の変化をポジティブに捉え、それを活用した事業展開を収益増加の対策として記載したことも、採択を引き寄せた要因のひとつと考えられます。
持続化補助金に採択された印刷業者の計画書の書き方【新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編】(3)ヌケモレなく述べる
今回見ている「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」において、同社は新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述が抜けており、上述の既に取り組んでいる対策だけを記載していました。これは、おそらく審査にネガティブな影響を及ぼしたと思われます。
このようなミスを無くすために、タイトルを素直に反映させて新型コロナウイルス感染症の影響、既に取り組んでいる対策と見出しを設けた上で内容を記載することによって、採択がより確実になったと考えられます。
持続化補助金に採択された印刷業者の計画書の書き方【新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編】(4)2つの側面から影響を述べる
前述した「【様式1】経営計画および補助事業計画」のフォーマットは、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>のホームページからダウンロードできますが、今回見ている<経営計画>「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」欄には、以下の但し書きがあります。
※新型コロナウイルス感染症による自社の経営や事業環境への影響を記載してください。また、現在取り組んでいる対策を記載してください。
この但し書きのポイントは、新型コロナウイルス感染症の影響に関する内容として、太字部分「自社の経営」への影響と「事業環境」への影響の記載が求められているということです。
つまり、まずコロナ禍で「自社の経営」がどうなったか、具体的には売上高や利益の変化などを述べるとともに、「事業環境」がどうなったか、具体的には印刷業界や顧客の変化を述べる必要があります。
同社は前述の通り新型コロナウイルス感染症の影響自体を記載しておりませんでしたが、このような記載の仕方をしていれば、採択がより確実になったと考えられます。
今回のコラムでは、同社が記載した<経営計画>「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」から、採択の可能性を高める計画書の書き方として(1)対策を2つに切り分ける、(2)コロナを味方にした対策を述べる、(3)ヌケモレなく述べる、(4)2つの側面から影響を述べる、を挙げました。
次回のコラムでは<補助事業計画>「2.補助事業の内容」を見ていきますが、同社の事例をご紹介した前回のコラムは以下となります。
2.小規模事業者持続化補助金の計画書作成をサポートします。
1,000件を超える支援実績を通じて蓄積してきたノウハウを活用して、計画書作成のサポートを行い、採択の可能性を高めます。詳しくはこちらから↓↓↓
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小規模事業者持続化補助金に応募したくなる本