同店は、女将である経営者が一人で切り盛りする創業3年目の居酒屋です。開業以来、地道に常連客を増やし続けてきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で客数が大幅にダウンしてしまいました。
これまでこれといった販促はほとんどしてこなかった同店ですが、何らかの手を打つ必要があると考え、小規模事業者持続化補助金を活用して、(1)ホームページの作成、(2)チラシの作成・配布、(3)メニュー表の作成、(4)web広告の出稿を行うことにしました。
そこで経営者は、弊社に計画書作成の支援をご依頼され、結果として同店は採択されたわけですが、前回のコラムに引き続き、同店が採択される計画書をどのように作成したのかをご紹介していきます。
下図は、小規模事業者持続化補助金<一般型>に応募する際の基本的な作成資料ですが、今回のコラムでは、その赤枠部分、様式2-1 経営計画書兼補助事業計画書① <経営計画>「2.顧客ニーズと市場の動向」について見ていきます。なお、当コラムの内容は2021年9月7日時点の情報に基づいています。
また、当コラムの内容は<低感染リスク型ビジネス枠>にも応用できますので、そちらに応募を予定されている方もご参考にして下さい。
1.「顧客ニーズと市場の動向」の書き方
(1)構成を決める
前回のコラムでは、まず「1.企業概要」の構成を決めたことを述べましたが、これは「2.顧客ニーズと市場の動向」でも同様です。当欄の構成として、まずはタイトルを素直に反映させ「(1)顧客ニーズ」、「(2)市場の動向」と大見出しを設け、当欄を大きく2つに切り分けることにしました。
次に「(2)市場の動向」はさらに「①業界全体の動向」、「②地域動向」という中見出しを設け、「①業界全体の動向」として年代別飲酒率の推移を述べました。「②地域動向」に関しては、さらに「a.市内の人口動向」、「b.商圏内の人口動向」、「c.競合動向」と小見出しを設けました。これら見出しを整理すると以下の形になります。
2.顧客ニーズと市場の動向
(1)顧客ニーズ
(2)市場の動向
①業界全体の動向→年代別飲酒率
②地域動向
a.市内の人口動向
b.商圏内の人口動向
c.競合動向
(2)ビジュアルに訴求する
ビジュアルに訴求することは、読み手の理解を促進させる効果が見込めます。当欄に盛り込んだビジュアルに訴求する内容は以下となります。
(1)顧客ニーズ: 酒類・飲酒代の支出の推移(2019年4月~2021年3月)を示したグラフ
(2)市場の動向
①業界全体の動向:年代別飲酒率の推移を示したグラフ
②地域動向
a.市内の人口動向:市内における年代別人口の推移(2014年と2021年の比較)
を示した表
b.商圏内の人口動向:商圏地図と商圏における年代別人口の推移
(2014年と2021年の比較)を示した表
c.競合動向:競合の店名、住所、特徴、ホームページの有無を記載した一覧表
このように、まず大見出し、中見出し、小見出しを設け、各見出しの下にはビジュアルに訴求する内容を記載しました。
(3)伝えたいことを明確にする
ここまで記載してきた内容を通じて、読み手に伝えたいことは概ね以下の内容です。
- コロナ禍でも全体的に高齢層の飲酒に対する支出が増加しているが、一人での家飲みで感じる寂しさを紛らわしたいというニーズ、帰省できない地方出身者が郷土料理を味わいながら故郷へ想いを馳せたいというニーズがある。
- 市内の人口は増加傾向であり、商圏内では中高年層の人口が増加している。
- この機会を捉えるべく商圏内には競合がひしめいているが、ネットをはじめとした販促活動を行っている競合は多くない。
従って、地方出身の女将が郷土料理を提供すること、ターゲットを中高年層に絞ること、それらに基づく情報をネットをはじめとした媒体で訴求すること、これらを行うために補助金を使いたいこと、という同店の取組は妥当性があることになります。
今回のコラムでは、同店の様式2-1 経営計画書兼補助事業計画書① <経営計画>「2.顧客ニーズと市場の動向」について、(1)構成を決める、(2)ビジュアルに訴求する、(3)伝えたいことを明確にする、といった点を意識して記載したことをお伝えしてきました。次回のコラムではこれに続く「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を見ていきます。
2.小規模事業者持続化補助金の計画書作成をサポートします
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小規模事業者持続化補助金に応募したくなる本