新聞の市場規模はここ14年間で3割以上縮小しています。活字離れ・スマートフォンによる情報収集の進展などがその理由とされています。そこで、各家庭に新聞を届ける新聞販売店の統廃合が進んでいる中、今回ご紹介する新聞販売店は、矢継ぎ早に新規事業へ打って出ており、業績を伸張させていました。
同店は、新たな事業として新聞購読者に対して家電のカタログ販売をすることとし、そのための告知費用と顧客管理システム導入費用を小規模事業者持続化補助金で調達することとしました。
そのご支援を弊社が行い、無事採択されたわけですが、どのようにして同店が採択される計画書を作成したのかをご紹介します。今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分、「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<経営計画>「2.顧客ニーズと市場の動向」を見ていきます。
1.「顧客ニーズと市場の動向」記入の仕方
(1)当欄を2つに切り分ける
当然のことですが、当欄には「顧客ニーズと市場の動向」を記載する必要があります。ですが、記載の内容が【顧客ニーズ】もしくは【市場の動向】になっていないケースがあります。
そこで、当欄に【顧客ニーズ】と【市場の動向】と2つの見出しを設けていただき、それぞれの見出しに応じた内容の記載を意識していただきました。以下では、【顧客ニーズ】と【市場の動向】それぞれをどのように記載したかを述べていきます。
(2)【顧客ニーズ】を定義する
【顧客ニーズ】は顧客の声や顧客の動向とは別物ですが、【顧客ニーズ】とそれらが混在して記載されている状況を防ぐために、何をもって【顧客ニーズ】と言うのか言葉の定義をする必要があります。
弊社では、これを「同店を利用して顧客が達成したい目的」と定義づけており、概ね以下の内容を記載しました。
- 主要顧客は高齢者が多く、インターネットを利用する敷居が高いため、紙媒体やテレビ、直接的なやり取りで情報を得たいというニーズがある。
- インターネットの便利さは理解しているものの、端末を使いこなす自信がなく、自分がやりたいインターネット活動を他人に行ってもらいたいというニーズがある。
- 集金で月1回ほど顔を合わせる顧客が多く、当社従業員との関係性を元にして、生活の質を向上させ、豊かな生活を送りたいというニーズがある。
(3)【市場の動向】を切り分ける
【市場の動向】は大きく<顧客動向>と<競合動向>に分けられ、<顧客動向>はさらにマクロ的な視点とミクロ的な視点から把握することが可能です。
まず、<顧客動向>をマクロ的な視点から取り上げたのが、「新聞の市場規模」です。インターネットで業界の市場規模を検索し、一般社団法人日本新聞協会が公表している「新聞の市場規模」を示したグラフとそれから言えることを盛り込みました。
次に、<顧客動向>をミクロ的な視点から取り上げたのが、「地域住民の人口動向」です。商圏内における過去8年間の人口動向を、厚生労働省の人口動態調査から拾い上げ、さらに75歳以上の人口とその割合を表にして記載しました。
さらに、<競合動向>として商圏が重複する新聞店の店名、住所、最近の動向を記載しました。この記述は、次に記載する「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を洗い出す際に比較対象として活用することとなります。強みは競合との差別的優位性であるためです。
このようにして「2.顧客ニーズと市場の動向」を記載しましたが、次回は「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を見ていきます。なお、当シリーズのバックナンバーは以下となります。
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