その事業者は、代表1名でシステムの構築を主たる事業としていました。ですが、代表はご自身の年齢に伴う体力面や技術進展状況への対応などを鑑み、主たる事業を転換する必要性を感じておりました。そんな中、たまたま出会った洋菓子の魅力にとりつかれ、洋菓子のネット通販へ徐々に転換していくこととしました。
そのためには、厨房設備の設置など製造に関わる投資や、ホームページの構築など販売に関わる投資が必要と判断し、小規模事業者持続化補助金でその資金を調達することとしました。そのご支援を弊社が行い、結果として採択されたわけですが、どのようにしてこの事業者が、採択レベルの計画書を作成していったのかをご紹介していきます。
今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分、「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<経営計画>「2.顧客ニーズと市場の動向」を見ていきます。
1.「顧客ニーズと市場の動向」記入の仕方
(1)当欄を切り分ける
当欄のタイトルは「顧客ニーズと市場の動向」ですが、このタイトルを受け、そのまま書こうとすると内容が冗長になり、読み手に伝わりにくくなってしまいます。そこで、【顧客ニーズ】【市場の動向】と2つの見出しを設け、それぞれを切り分けて記載しました。
小規模事業者持続化補助金に限った話ではありませんが、分かりやすい計画書を記載するには、ひとつの欄をどのように切り分けて記載するかもポイントとなります。その切り分け方として、タイトルに忠実に切り分けることをお勧めしています。
(2)【顧客ニーズ】を切り分ける
同社の場合、これまで対象としてきた顧客は、システムを発注する会社です。これに対して今後対象としたい顧客は、短期的には洋菓子好きの一般消費者ですが、中長期的には洋菓子店となります。これは、システム構築の経験に洋菓子の製造販売ノウハウを加え、洋菓子店へ「売れる仕組み」を提供していきたいという考えがあるからです。
よって【顧客ニーズ】は<システム発注者のニーズ><洋菓子店のニーズ>に切り分けて記載しましたが、<システム発注者のニーズ>はこれまでの事業経験をもとに列挙し、<洋菓子店のニーズ>は推測に基づいて列挙しました。
(3)【市場動向】は事業転換後を踏まえる
【顧客ニーズ】の次は【市場動向】を記載するわけですが、ここでは事業転換後に留意したい市場の動向について記載することとしました。
まずは、洋菓子店を創業する方の市場動向として、中小企業庁の中小企業白書より「起業家が直面する課題」を取り上げ、その中でも「販売先の確保」が大きな課題になっていることを述べ、同社が事業転換後に提供したい「売れる仕組み」の必要性を訴求しました。
次に、経済産業省の工業統計調査より、洋生菓子の「出荷金額」「産出事業所数」を5年間分列挙し、その推移が分かるようにしました。洋生菓子の出荷金額は増加傾向であるものの、産出事業所数は減少傾向となっていることから、小規模事業者が淘汰されている傾向が読み取れることを述べ、同社が事業転換後に提供したい「売れる仕組み」の必要性を訴求しました。
このようにして「2.顧客ニーズと市場の動向」を記載しましたが、次回のコラムでは「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を見ていきます。なお、当シリーズのバックナンバーは以下となります。
2.小規模事業者持続化補助金の申請書類作成をサポートします
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