人手不足を食い止めるために意識するべき3つの窓

人材確保

 「私は、どんなに経営が厳しくても人材を解雇したことはありません。」そのように言ったある経営者は、従業員全員参加の頻繁な食事会や、就業後のレクレーションにより、仕事を離れた交流も行っています。

 よって、一見コミュニケーションはとれているように見えますが、話を深堀していくと、実は社内のコミュニケーションは表層的なものに留まっており、解雇しないのではなく、解雇できない、つまり人材が辞めていく状況が長年続いていることが分かりました。そこで、今回のコラムでは、このような状況をどのように食い止めるべきかを見ていきます。

ジョハリの窓

 人間にはそれぞれ特徴があります。その特徴は、自分が知っているものもあれば、自分が知らないものもあります。また、他人が知っているものもあれば、他人が知らないものもあります。

 米国の心理学者ジョセフ・ルフト氏とハリ・インガム氏は、1955年にコミュニケーションを円滑にするための考え方として、これら人間の特徴を組み合わせた下図の「ジョハリの窓」を提唱しました。

人手不足を食い止めるために意識したい窓1:開放の窓

 自分はギャンブルが大好きで、奥さんが、それを許すかどうかはともかくご主人のギャンブル好きを分かっているのが、図の左上「公開の窓」から見えるその人の特徴です。

 これは、自己認識・自己開示が進んでいる状態であり、コミュニケーションを促進するためには、この窓を広げる必要があります。どんなにコミュニケーションを促進する取組みをしても、その人の「開放の窓」が狭い状況では、従業員は経営者の理解が進まず、コミュニケーションも促進されません。

 この「開放の窓」を広げるには2つの方向がありますが、まず、行うべきは図の左下「秘密の窓」を狭める方向です。

人手不足を食い止めるために意識したい窓2:秘密の窓

 自分はギャンブルが大好きなことを認識しており、奥さんに秘密でギャンブル通いをしているのが図の左下「秘密の窓」から見えるその人の特徴です。

 この窓を狭めることにより「開放の窓」が下に広くなります。そのためには、自己開示が必要となります。冒頭の経営者が、どういう目的で食事会やレクレーションを行っているのかを示すことは、経営者の考えを開示することになります。

 私が一般社員としてガソリンスタンドの現場で働いていた頃、部下をガンガン叱りつける上司がいました。ですが、職場が彼を中心によくまとまっていたのは、様々な要因があったにせよ、彼が遠慮せずに自身の思っていることを部下に開示していたことが大きな要因だと考えています。

 このようにして、自己開示を進め、「秘密の窓」を狭めながら図の右上「盲点の窓」を狭めることとなります。

人手不足を食い止めるために意識したい窓3:盲点の窓

 自分にはギャンブルが好きだという自覚がないものの、日々の行動から、奥さんはご主人がギャンブル好きだということを認識しているのが、図の右上「盲点の窓」から見えるその人の特徴です。

 この窓を狭めることにより、「開放の窓」が横に広くなります。そのためには、周囲からのフィードバックが必要となります。話しやすい印象を与えないことには周囲はフィードバックができませんので、まずは自己開示をして「秘密の窓」を狭める必要があります。

 冒頭の経営者が、食事会やレクレーションの目的を話した上で、そのような目的や手法はどう思うかを聞いてみる、ということです。私がガソリンスタンドの店長として月1度の会議に出席していた頃、私の上司が会議終了後に「今日の私のプレゼン、どうだった?」とよく聞いていたのは、この「盲点の窓」を狭まる目的があったはずです。

 今回のコラムでは、人手不足を食い止めるために意識するべき3つの窓として、「開放の窓」「秘密の窓」「盲点の窓」を見てきました。なお、図の右下「未知の窓」を覗いても、自分も他人もその人の特徴は見えませんので、意識するべきはこれまで見てきた3つの窓ということになります。

 重要なことは、開放の窓を広げ、真のコミュニケーションをとるために、自己開示をすること、フィードバックを望むこと、自己開示をしてからフィードバックを望むこと、です。リーダーはこれを実施して人材定着率は高めていきましょう。

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