創業100年を超える小売店後継者の悩み
創業100年を超えるロードサイド店舗で事業展開中のある企業で働く次期後継者は、従業員の意識が高まらないことが悩みの種でした。父親が社長、母親が専務、自身が後継者であり、それ以外は血縁関係のない従業員という人員構成の中、一族で構成される経営陣と一族以外で構成される従業員では仕事に対する意識の乖離が大きすぎる、というのです。
具体的には、経営陣が従業員に、仕事に対する意識を高めるべく、経営寄りの全体感が必要な仕事をさせようとしても、「それは経営者が行う仕事でしょう」とにべもなく断られてしまい、「普通は、そういうことも従業員はやってくれるはずでしょう」と悩みを吐露されました。
他人の意識と自分の意識
この悩みを解決するポイントは、血縁関係がなく、産まれも育ちも親も年齢も立場も違う他人が自分と同じ意識を持つことは簡単ではないという前提をしっかり認識しなければならない、ということです。血縁関係のある親子ですら意識、価値観、考え方は違うものです。
イソップ寓話の1つに「北風と太陽」があります。旅人のコートを脱がせようと北風が強風を吹きつけても旅人のコートをはぎ取ることはできませんでした。しかし、太陽がポカポカと旅人を照らしてあげると、体が温かくなった旅人はコートが邪魔になり、自分から脱ぐ、という話です。他人の意識を「変えてやる」という北風的な意識では、おそらく何も変わらないでしょう。
まずは行動にフォーカスする
仮に、意識が変わったとしても行動が変わらなければ、意味がありません。よって、意識の変化よりも、行動の変化にフォーカスするべきでしょう。
そこで、経営に携わる仕事を「させる」のではなく、経営に携わる仕事の一部を「手伝ってもらう」ことから始めると良いでしょう。そして、徐々に手伝ってもらう範囲を広げ、さらに手伝っていただく頻度を高めていきます。
そのようにして、仕事が徐々に変わると、とるべき行動も変わり、それに伴って意識が変わることが期待できます。
自分の「普通」と他人の「普通」
冒頭の次期後継者は、「普通は、そういうことも従業員はやってくれるはずでしょう」と言いました。この「普通」は、その後継者にとっての「普通」であり、従業員にとっての「普通」ではありません。「普通」を「一般的に」へ置き換えたとしても同じ話です。
経営陣の意識、価値観、考え方と従業員のそれらに乖離があると感じる経営陣は「普通」という言葉を乱発していないか、一度点検をしてみる必要があるでしょう。
従業員の意識が高まらないと悩む経営者が心掛けるべきことは、意識ではなく行動にフォーカスすること、自身の「普通」と従業員の「普通」は別である、という点を認識した行動を心がけるべきと考えますが、いかがでしょうか。
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