石材店の事例から見る経営革新計画の書き方①

経営革新計画

 その石材店は元々墓石の販売を主たる事業としていましたが、車両の車輪止めや傘立てを御影石で作って市場投入するなど、独創的な商品展開を行っていました。そして自社の事業をさらに拡大させるべく、地元の商工会を通じて小規模事業者持続化補助金に応募しました。

 その際に、商工会の経営指導員の方から経営革新計画の策定を勧められ、これに取り組むこととし、弊社がそのご支援をしました。結果として経営革新計画の承認を取得しましたが、そのプロセスを見て行きたいと思います。なお、経営革新計画承認制度の詳しい内容は以下のリンクをご参照下さい。

経営革新計画の策定支援について

 下図は経営革新計画の構成ですが、今回のコラムでは赤枠部分「事業概要」「自社の内部環境」「自社の外部環境」「自社のビジョン」「ビジョン達成のための課題」といった現状分析項目を記載する際の留意点について述べていきます。

1.現状分析項目の書き方

(1)「事業概要」の書き方

 まずは「事業概要」を記載しますが、その項目は、会社名、事業所所在地、代表者名、設立年月日、資本金、従業者数、経営理念、事業内容、主要取引先、取引銀行、沿革となります。

 この中で、同社は経営理念が策定されていませんでしたので、これを機会に検討していただきました。経営理念は「自社はなぜ存在しているのか」という問いの答えであり、存在意義を示しますが、これがあるメリットは事業が力強くなるということです。

 「あなたはなぜ生きていますか」という問いを投げかけられて、即答できる人は多くないはずですが、その答えがどうであれ、即答できたとしたら力強さを感じさせるはずです。これをご理解いただき、経営理念を策定していただきました。

(2)「自社の内部環境」の書き方

 自社の内部環境は「強み」と「弱み」に切り分けて洗い出し、記載します。「強み」は、顧客に価値を提供でき、同業他社よりも優れている経営資源であり、「弱み」はその逆で顧客に価値を提供できず、同業他社よりも劣っている経営資源ということができます。

 経営資源ですから、人・物・金・情報の切り口から検討すると洗い出しやすくなるでしょう。結果として内部環境は以下のようにまとまりました。

(3)「自社の外部環境」の書き方

 自社の外部環境に関しては、「競合動向」「顧客動向」が主なテーマになります。「競合動向」に関しては、商圏内で石材を扱っている企業の社名・住所・URL・特徴を一覧表にしていただきました。

 「顧客動向」に関しては、新型コロナウイルスの影響によって石材製品の購入態度がどう変わったのか、また、消費者・事業者双方が同社の顧客ですが、それぞれの購買態度の特徴を記載していただきました。

(4)「自社のビジョン」の書き方

 経営革新計画の計画期間は3年以上ですが、まずは3年後に自社がどのようになっていたいのかを検討していただきました。しかし、明確なビジョンを打ち出すことができなかったため、後ほど策定する売上・利益計画を踏まえて、3年後の売上高と税引後利益をビジョンとすることにしました。

(5)「ビジョン達成の課題」の書き方

 ここまでを見てくる中で同社の課題として浮かび上がってきたのは、情報発信と購買までの動線設計です。品質の高い製品を安価で提供しているものの、そのような自社の強みを訴求しきれておらず、また、同社のそのような情報に接した方が購買するまでのプロセスを描き切れておりませんでした。これらを踏まえて課題設定をしました。

 今回のコラムでは、「事業概要」「自社の内部環境」「自社の外部環境」「自社のビジョン」「ビジョン達成のための課題」の書き方を見てきました。これら現状の把握は計画策定に大きな影響を及ぼしますので、丁寧に洗い出すことをお勧めしています。

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