経営革新計画の書き方10:経営資源(ヒト・モノ・カネ)の充実

経営革新計画

 前回のコラム経営革新計画の書き方9:販売のシステム化では、ターゲットの設定、販売チャネル、営業活動と営業ツールについて述べました。このような販売計画の策定は、ヒト・モノ・カネという経営資源の中でカネ、つまり財務的資源を充実させることと繋がります。なお、この経営革新計画の全体像は、以下となります。

 1.会社概要
 2.当社の内部環境
 3.当社の外部環境
 4.当社のビジョン
 5.ビジョン達成の課題
 6.新たな取組みの内容
 7.販売計画
 8.設備投資計画
 9.雇用計画
 10.事業推進体制
 11.教育研修計画
 12.売上・利益計画
 13.返済計画
 14.行動計画

 今回のコラムでは、「8.設備投資計画」によりモノ、つまり物的資源をいかに充実させるか、そして「9.雇用計画」「10.事業推進体制」によりヒト、つまり人的資源をいかに充実させるかという点を見ていきます。

経営革新計画の数値要件

 経営革新計画では、計画終了時に【付加価値額】【1人当たり付加価値額】【経常利益】それぞれにおいて、以下の伸び率を達成する計画であることが、承認取得における条件の1つになっています。

 【付加価値額】=営業利益+減価償却費+人件費
 3年計画で9%以上、4年計画で12%以上、5年計画で15%以上

 【1人当たり付加価値額】=付加価値額÷従業員数
 3年計画で9%以上、4年計画で12%以上、5年計画で15%以上

 【経常利益】=営業利益-営業外費用
 3年計画で3%以上、4年計画で4%以上、5年計画で5%以上

 なお、経営革新計画上の【経常利益】は、決算書などに記載されている「経常利益」と算出方法が違う点に留意する必要があります。また、この3つの数値のうち、【付加価値額】が持つ意味を考えると、この計画の有用性が見えてきます。

付加価値額が持つ意味

 前述の通り、付加価値額は、営業利益と減価償却費と人件費の合計です。つまり、「本業で儲けること」「投資を行うこと」「雇用を拡大させること」により、その値は大きくなっていきます。よって、経営革新計画は、この3点を促進させる計画である、ということが言えます。

 本業で儲ければ、一般に納税額が大きくなります。投資や雇用を行えば、世の中にお金が回ります。結果として経済が良い方向に回っていきます。

 繰り返しになりますが、前回のコラムで取り上げた販売計画は「本業で儲ける」ためのものであり、カネという経営資源の充実に繋がります。そして、「投資を行う」ための設備投資計画でモノという経営資源を充実させ、「雇用を拡大させる」ための雇用計画でヒトという経営資源を充実させることとなります。よって、経営革新計画を立案し、都道府県の審査に通るということは、経営資源を充実させる具体的な取組みに基づく、事業拡大のための戦略作りと言えます。

 なお、仮に新規の設備投資も雇用も発生しない計画であったとしても、付加価値額、1人当たり付加価値額、経常利益の伸び率をクリアしていれば、数値的な要件は満たしていますので、問題はないことを申し添えておきます。

 これらを踏まえた上で、設備投資計画と雇用計画のポイントについて見ていきます。

設備投資計画のポイント

 仮に200万円の車を購入し、5年後にそれを売ったとしたら200万円で売れる可能性はほとんどありません。なぜなら【価値】が減ったからです。この【価値】の減少分を費用として考えようというのが【減価償却費】です。

 設備の価値がなくなるまでの期間は、法令でその設備ごとに決まっており、これを耐用年数と言います。乗用車の耐用年数は6年ですから、200万円÷6年で約33万円が年間の減価償却費として計上されることとなります(定額法の場合)。

 この減価償却費は現金の流出を伴わない費用ですので、【資金繰り】に影響します。よって、設備投資計画には、いつ、いくら投資するのか、その資金の調達方法だけでなく、減価償却費がいくら増えるのかも記載する必要があります。

雇用計画のポイント

 雇用計画は、いつ、何人を採用するのか、増加人件費はいくらかという点の他に、【どのような媒体】に【どのような内容】で募集するのかを明確にすることが重要です。多くの募集広告が街中にもネットにも溢れる中、応募者の目に留まる募集広告を打つには、【ビジュアル】に訴求すること、【ビジョン】を示すこと、強い【キャッチフレーズ】を載せることがポイントとなります。これらは以下のコラムを参考にして下さい。
 募集しても応募がない。自店の人材確保ができない3つの理由
 応募者が少ないガソリンスタンドの求人広告3つの特徴
 応募者が集まる求人メッセージを作る6つのステップ

 そして、事業推進体制として、現状の組織図と雇用計画通りに雇用が実現された後の組織図を記載します。このようにして、設備投資計画、雇用計画を立案し、事業推進体制を決めたら、次回で述べる教育研修計画を検討していくこととなります。

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