前回のコラム「経営革新計画の書き方13:数値計画書の作り方4つのポイント」では、売上高、原価、費用の見込み方についてのポイントを述べました。なお、この経営革新計画の全体像は、以下となります。
1.会社概要
2.当社の内部環境
3.当社の外部環境
4.当社のビジョン
5.ビジョン達成の課題
6.新たな取組みの内容
7.販売計画
8.設備投資計画
9.雇用計画
10.事業推進体制
11.教育研修計画
12.売上・利益計画
13.返済計画
14.行動計画
このうち、今回のコラムでは、「13.返済計画」について見ていきます。
返済計画とは
返済計画の実態は【資金繰り】計画です。売上が計上されても、支払いが現金ではなく、掛け売りだったりクレジット払いだったりすると、売上の計上がなされる時期と入金がなされる時期にタイムラグが発生します。売上が計上された後、入金がされる前に、会社に現金がなくなってしまうと支払が滞ってしまいます。
そこで借入金などで事業活動を継続していくわけですが、計画期間内は資金繰りがショートしないことを示したものが返済計画ということになります。
当期首の現金在高に、売上・利益計画で見込んだ税引後利益(便宜上全額を現金と見なします)を足し、年間の借入金返済額を差し引き、予定している新規借入金を足せば、期末の現金在高が算出できます。これを経営革新計画の終了年度まで示したものが返済計画となります。
資金繰り円滑化のために
資金繰りのポイントは【入金は早く】【支払は遅く】【在庫は少なく】の3点です。
【入金は早く】とは、同じ売掛であっても入金が翌月の場合と3か月後の場合では、翌月の方が資金繰りは楽になります。よって、可能な限り入金を早くしていただく働きかけが必要です。
【支払は遅く】とは、仕入を買掛で行う場合、支払が翌月の場合と3か月後の場合では、3か月後の方が資金繰りは楽になります。よって、可能な限り支払は遅くしていただく働きかけが必要です。
【在庫は少なく】ですが、在庫は「使えない現金」という捉え方ができますので、手持ちの在庫が必要最低限のレベルになるように、販売を促進させて早く現金に変えるか、仕入れを抑える必要があるということです。
しかし、これさえ実施していれば資金繰りは円滑にいくかというとそうではありません。
資金繰りショートを招く会社の特徴
資金繰りの厳しい会社は、【赤字】の場合がほとんどです。つまり、収入よりも支出の方が大きい企業です。どんなに【入金は早く】【支払は遅く】【在庫は少なく】しても、いただくお金よりも使うお金の方が大きかったら、資金はショートします。
借入金でショート分を賄ったとしても、赤字が続けば、借入を増やすしかなく、いずれ借入はできなくなり、事業は行き詰まります。そのようにならないためにも、黒字化させる必要があります。
なお、経営革新計画では、計画の最終年度が黒字になっていないと計画の承認はされないことになっています。
資金繰りが厳しい時
経営革新計画の書き方から内容が逸れますが、実務として資金繰りが厳しい時の対処法を見ていきます。なぜ資金繰りが厳しいかというと、支払いができないから厳しいわけで、この支払いをどうにかできないか、という観点から見ていきます。
まず検討したいのは【税金支払の延期・分割】です。税金は他の債務よりも回収力が強く、自己破産をしても免責になりませんし、裁判所の判決がなくても、職員の判断で差押えが可能です。また、会社が倒産した場合に金融機関の債権よりも、税金の回収が優先されます。
よって、支払いが遅れたからといって税務署の職員が即、督促に来るわけではありません。ですが、滞納は様々な弊害を及ぼしますので、資金繰りが厳しい場合は、税務署にて相談することをお勧めします。
次に検討したいのは【社会保険料支払の延期・分割】です。社会保険料の督促状は税金のそれよりも早い段階で送付され、無視してしまうと税務調査の上、差し押さえがなされます。ですが、年金事務所は個別の事情に耳を傾けてくれますので、相談しましょう。なお、社会保険料支払の延期・分割の場合は、資金繰り表や事業計画の提出が必要となります。
【金融機関への返済】も検討しましょう。金融機関としては、貸付先の会社が倒産してしまっては回収できませんので、返済条件変更の相談に乗ってくれます。これにより、返済期間は長くなれども月々の返済金額が小さくなることが期待できます。
この3つを優先的に検討し、家賃など経費の支払い、仕入先への支払い、給与の支払いはしっかり行うことが事業継続の力となるはずです。
今回のコラムでは、返済計画の立案をテーマに資金繰りを見てきました。次回は、経営革新計画の最終項目である行動計画を見ていきます。
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