上司が退社後に荒れるガソリンスタンド
一昔前、一部のガソリンスタンドでは、店長が部下に店の営業を任せて退社すると、部下たちは示し合わせて以下の行為をしたものでした。
・顧客の待合室で缶コーヒー片手にタバコを吸いながら顧客を待つ
・丸めた軍手をボール代わりに給油エリアで野球をする(なぜか職場にバットがあったり…)
・友人を呼んで待合室で騒いだり、ピットで車の整備を始めたりする
あたかも校則を破ることに勤しむ学生のようですが、このやってはいけないことをやりたくなる心理をカリギュラ効果と言います。
これは、かつてアメリカとイタリアが合作した「カリギュラ」という映画が語源となっています。その内容があまりにも過激であったため、一部地域で公開禁止になってしまいましたが、このことにより、かえって世間の関心を惹いたことにちなんでいます。
とはいえ、このような行為を野放しにしておくわけにはいきません。
規律性の間違った高め方によって失ったもの
このようなガソリンスタンドのスタッフがとった行為は客数の減少・客単価の低下に繋がっていくこととなるわけですが、多くの店長や経営陣は、このような行為を知った場合に、怒鳴りつけ、場合によっては解雇をして、店舗の規律性を高めようとし、結果として人手不足が慢性化していきました。
問題はこの「怒鳴りつけ」です。上司が感情的になったら、部下としてはどうしようもできず、職場に見切りをつけるきっかけになります。まれに退職覚悟で上司に食って掛かる部下もいますが、こういう部下も辞める前提がありますので、人手不足に直結します。
では、店舗の規律性を高めると同時に、人手不足を回避するためにはどのような方法があるのでしょうか?
なぜ怒鳴るのか?
怒鳴る上司は、部下の言動にカチンと来たから怒鳴るわけですが、それは、上司が傷付いたことを意味します。なぜ傷付いたのか。要因のひとつとして挙げられるのは、部下の言動がその上司が持っている「べき論」に刺さったから、というものです。
例えば上司が、帰宅途中にふと用事を思い出して、職場に戻ったとします。するとスタッフが、顧客の待合室でコーヒー片手にタバコを吸っている姿を発見しました。
「お前ら、何やってんだっ!」怒鳴りつける上司。
この上司は、自身の持つ「スタッフは休憩室で休憩するべき」という「べき論」にスタッフの行為が刺さったから傷付き、怒鳴ったわけです。
この「べき論」がなければ、つまり「上司の目を盗んで休憩室で休憩しないという価値観もある」という認識をもっていれば、上司は怒鳴ることなく、冷静に顧客の待合室でコーヒー片手にタバコを吸ってはいけない理由を諭すことができます。
さらには、なぜそのような事態を招いたのか、自身のマネジメントの再点検をして、再発防止に努めることができるでしょう。その姿勢は、スタッフへの反省を促すことにも繋がりやすくなります。
重要なことは、この「べき論」に気付くことです。カチンと来たときは自身の「べき論」に気付く機会だということです。長年お付き合いしてきた「べき論」は簡単には捨て去ることはできません。ですが、不要な「べき論」が何であるかがわかるだけで傷付きにくくなっていきます。
傷付いた上司は怒ることしかできませんが、傷付いていない上司は叱ることができます。その差が、規律性と定着率向上の両立に繋がるポイントとなるでしょう。
なお、どんな場合でも怒鳴ってはいけないということではなく、状況によっては、あえて怒鳴ったほうが効果的な場合もあります。お伝えしたいのは、怒る/叱るを使い分けるための冷静な判断力が重要だということであり、その判断を鈍らせる「べき論」を排除していきましょう、ということです。
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