北国で生き残りをかけたガソリンスタンドの油外収益向上のコツ

戦略の考え方

北国のガソリンスタンドの特徴

 私は、都内のガソリンスタンドで働いた後、出身の青森県青森市に戻って別のガソリンスタンドに勤務した経験があります。
 覚悟はしていましたが、北国のガソリンスタンドで働くということは、関東とは桁違いの寒さの中で働くことを意味しています。都内で働いていた頃よりも下着は上下とも一枚多く着込むものの、給油中に鼻水は垂れてくるわ、フィールド内の雪で転倒するわ、洗車機は凍るわで、北国ならではのガソリンスタンドの厳しさを思い知らされました。

 とは言うものの、いかにして生き残るかということは、関東も北国も同様の課題です。そのような中、北国のガソリンスタンドならではの生き残り方として挙げられるのは、タイヤ交換と高額洗車の販売です。

北国のガソリンスタンドにおけるタイヤ交換

 関東でも北国でも初冬にスタッドレスタイヤへの交換をするためにタイヤ量販店やガソリンスタンドに行列はできますが、その需要数は、ほぼ同等という印象です。関東の方が人口は多いものの、車を運転する人のうち、一定数は電車にシフトすることができるため、需要が割り引かれます。反面、北国の方は関東に比べたら人口は少ないかもしれませんが、車は生活の足であり、電車にシフトすることが困難であるため、多くの方がタイヤ交換を余儀なくされます。

 これは、タイヤに対する意識が向いている人が多い、ということです。関東のガソリンスタンドでは、年間1,000本のタイヤ販売ができれば、「大量販売」と言われますが、タイヤに意識が向いている住民が多い北国のガソリンスタンドでは、その数倍が売れます。スタッドレスタイヤが売れるからです。

 平成28年5月に経済産業省資源エネルギー庁が発行した「SS経営に関する優秀事例100選」で紹介されている岩手県八幡平市の株式会社小山田商店では5店舗で年間10,000本のタイヤを販売します。1店舗平均2,000本の計算になります。

 北国のガソリンスタンドは、タイヤ販売を強化することにより、成果が出やすいと言えるでしょう。成果が出れば、ガソリンスタンドで働くスタッフのモチベーションが上がり、タイヤ販売への行動が強化され、正のスパイラルが回り始めます。

北国のガソリンスタンドにおける高額洗車

 北国の冬は、街も車も雪に埋もれます。そんな中、洗車の需要はあるのか、という懐疑的な見方があります。さらにコーティング洗車などの高額洗車など売れない、という固定観念もあります。

 そんな中、前述の「SS経営に関する優秀事例100選」に掲載されている北海道札幌市に所在する三愛石油販売株式会社(現 東日本三愛石油)オブリステーション月寒東SSでは、来店客アンケートを実施した結果、高額洗車に対する一定の需要があることを突き止めました。

 繰り返しになりますが、地方に住む方々にとって、車は生活の足として大きな役割を果たします。そのような中、冬場でもきれいな車に乗りたい、また、道路に蒔かれた融雪剤による車のボディに対するダメージを防ぎたいというニーズがあるのでしょう。事実、北海道のガソリンスタンド全体におけるコーティング洗車の売上は全国でもトップレベルです。

 このようなニーズを踏まえた取組みにより、洗車収益が前年の300%、ガソリンや軽油といった燃料油以外の収益である油外収益は前年の167%にまで伸張させました。

 北国で生き残りをかけたガソリンスタンドの油外収益向上のコツとして挙げられるのは、その地域ならではの顧客特性・顧客ニーズを捉えた取組みである、と言えるでしょう。

油外販売に関する参考コラム

 ■ガソリンスタンドが点検をしないでエンジンオイルを販売するには
 ■ガソリンスタンドスタッフが油外商品購入の即決を迫るデメリット
 ■ガソリンスタンドが洗車を無料で提供するべきではない理由

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