JAF(日本自動車連盟)によると、タイヤのトラブルによるロードサービスの出動件数は、最新の公表データである2017年度では、過去最高の39万1,799件となりました。10年前の2007年度が28万6,934件でしたから、10年間で10万件以上増加しています。
この背景に、車のユーザーが日常的に訪れているであろうガソリンスタンドがタイヤを積極的に販売していないから、というものがないでしょうか。今回のコラムでは、ガソリンスタンドがいかにタイヤの売れる仕組みを構築するべきか、その取組みを見ていきます。
返報性の原理
タイヤが売れる仕組みを構築するには、擦り減ったタイヤ、ひび割れたタイヤを見つける仕組みを構築する必要があります。その場合に有効なのはタイヤの空気圧点検をすることです。
人は、何かをいただいたり、何かをしてもらったりすると、相手が好きか嫌いかに関わらず、お返しをしようと考えることを返報性の原理と言います。
給油中に擦り減ったタイヤ、ひび割れたタイヤを見つけるために顧客の許可を得ずしてタイヤを覗き込むガソリンスタンドはタイヤが売れず、顧客のご要望に基づいてタイヤの空気圧点検をするガソリンスタンドはタイヤが売れるのは、返報性の原理が利いています。
かといって、顧客がタイヤの空気圧点検の必要性を認識しないと、タイヤの空気圧点検を申し出ても、断られてしまうでしょう。そこで、なぜタイヤの空気圧点検をガソリンスタンドが勧めるのか、その根拠が必要となります。
「三方良し」
ガソリンスタンドがタイヤの空気圧点検を勧めるその根拠は「タイヤを売るためである」では、顧客は空気圧点検に応じないでしょう。
「三方良し」という言葉があります。これは「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」を指しますが、その行動が、ガソリンスタンドにも、顧客にも、世間にもメリットをもたらすことが重要です。
ご来店された車両のタイヤ空気圧点検をすることにより、
・売り手であるガソリンスタンドは、擦り減ったタイヤ、ひび割れたタイヤの交換を促し、適正な利益をいただくことができる。
・買い手である顧客は、健康なタイヤで安全に、そして安心して運転できる。
・世間は、タイヤトラブルが原因の停車による渋滞、タイヤトラブルが原因のもらい事故が回避できる。
このような前提の下で顧客に接する必要があります。その際に「10年間でタイヤのトラブルが10万件以上増えています」といった声掛けをしながら、冒頭のタイヤトラブルに関するJAFの公表資料が掲載されたチラシをハンドアウトして、空気圧点検を促すと顧客はそれに応じやすいでしょう。もちろんホームページ、SNSにも掲載することが必要です。
さらに、ガソリンスタンドに空気圧を見て欲しいというニーズがあることは、インターネットの検索ワードを見ていくと分かります。
空気圧点検に対するニーズ
あるキーワードでネット検索する場合に一緒に検索されるキーワードを「サジェストキーワード」と呼びます。グーグルで「空気圧」というキーワードで検索する場合、「ガソリンスタンド」がサジェストキーワードのひとつになっていることが分かっています。また、「空気圧のみ」と「ガソリンスタンド」の組み合わせで検索されることも多いようです。
そこで、ハンドアウト用のチラシに、前述したJAFの公表資料の他に「当店は無料でタイヤの空気圧を点検します」「タイヤの空気圧だけのご利用大歓迎」などといった空気圧点検を促すメッセージを入れて、空気圧点検の台数を増やすと良いでしょう。
空気圧点検の台数が増えるということは、タイヤ点検が増え、結果として摩耗したタイヤ、ひび割れのあるタイヤを発見する可能性が高まります。発見できたら交換してくれる可能性が出てきます。
以上より、ガソリンスタンドが空気圧点検だけの利用を歓迎するべき理由は、点検台数を増加させて、不健康なタイヤを発見し、「三方良し」を実現するためである、と言えるでしょう。
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