「『客』じゃない。せめて『お客さん』と言いなさい。」
私が20代の頃、ガソリンスタンドでアルバイトをしていたある日、店長と面談をすることとなりました。その際に、私は顧客のことを「客」と言ったのですが、冒頭の台詞はそれを受けた店長から発せられたものです。
その後、私は幾多のガソリンスタンドを転々としましたが、顧客を「客」と呼ぶ店舗の多いこと多いこと。今回のコラムでは、顧客を「客」と呼ぶガソリンスタンドにどのようなデメリットがあるのかを見ていきます。
顧客を「客」と呼ぶデメリット1:接客レベルが低下する
人は、接する言葉で行動が変わります。これを実証したのがニューヨーク大学のジョン・バルブの実験です。
まず、被験者である大学生を数個のチームに分け、それぞれのチームにいくつかの単語群を示しました。この際に、ある1チームだけ、与える単語群に「忘れっぽい」「腰痛」「しわ」「白髪」「杖」といった高齢者をイメージさせる単語を混ぜておきました。
そして、その単語群を使って短い文章を作ってもらいました。この作業を終えた後に各チームメンバーを徒歩で別の場所に移動させたところ、高齢者をイメージさせる単語を混ぜたチームの学生は、そうでないチームの学生よりも歩くスピードが明らかに遅かった、というものです。
この実験は、言葉に行動が影響される、ということを示しています。私たちが日々、最も高頻度で接する言葉は自分が発する言葉です。乱暴な言葉を発していれば乱暴な行動をとるようになりますし、丁寧な言葉を発していれば丁寧な行動をとるようになります。
よって、顧客を「客」と呼ぶガソリンスタンドはそれ相応の接客をすることとなってしまいます。
顧客を「客」と呼ぶデメリット2:顧客に粗末に扱われる
「おい、そこの兄ちゃん」「遅せーんだよ」こんな乱暴な言葉を浴びせる顧客がいます。浴びせる人がいるということは、浴びせられる人がいるわけで、浴びせる人を悪者にするのは簡単です。
しかし、浴びせられた人に非は全くなかったと言い切れるのでしょうか。人は扱われたように相手を扱います。顧客は扱われたようにスタッフを扱います。顧客を「客」と呼ぶようなスタッフが顧客に粗末に扱われる理由がここにあります。
これに関連した話で、経営陣が現場スタッフをどう扱うかによって、現場スタッフが顧客をどう扱うかが決まってくる、と言われます。これは、従業員満足を感じていないスタッフは顧客満足を提供できないという話で、経営陣が従業員満足を提供する必要性を示しています。
なお、従業員満足の提供に関しては以下のコラムを参考にしてください。
ガソリンスタンドが従業員満足の向上に取り組むべき理由とは
顧客を「客」と呼ぶデメリット3:関係性が構築できない
ガソリンスタンドは様々な商品を扱いますが、その中でもガソリンや軽油といった燃料よりも、オイルや洗車など燃料以外の商品である油外商品のほうが利益率が高く、これをどの店舗も売りたいわけです。
そして、これらの商品の多くは形があっても顧客の目に触れることはありません。形がない商品つまりサービスを販売するには、顧客とスタッフの関係性が重要となります。
顧客を「客」と呼んでいては関係性の構築は困難です。スタッフ同士の会話では「客」と呼んでいても、実際に顧客との会話で相手を「客」とは呼べません。そこで「お客さん」「お客様」と呼ぶわけですが、とってつけた感がバリバリなわけです。
もっとも、この場面で一番好ましいのは顧客を名前で呼ぶことですが、それが無理ならば「ご主人」「奥様」「お嬢さん」「社長」と相手に応じた呼び方を検討したいところです。これにより、顧客との心理的な距離が近づき、関係性が構築できる可能性が高まります。
するとスタッフ同士の会話も
「さっき来店されたご主人だけど、次回、オイル交換してくれるって」となります。
これが「客」と呼んでいるスタッフ同士の会話だと
「さっき来た客だけどさ、次回、オイル交換するってさ」となってしまいます。
このようにして、デメリット1で挙げた接客レベルの低下につながっていきます。
今回のコラムでは、顧客を「客」と呼ぶガソリンスタンドのデメリットとして、1.接客レベルが低下する、2.顧客に粗末に扱われる、3.関係性が構築できない、を挙げました。経営者・管理職は、スタッフの言葉遣い一つで、意識が変わり、関係性が変わることに留意して儲かるガソリンスタンドを作っていただきたいと思います。
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