心理的財布
日々、新聞に折込まれてくるチラシをチェックして、1円でも安い食材・日用品を探すことに余念のない主婦が、久しぶりに学生時代の同窓会に出席することになり、他店より数千円高いスーツを何のためらいなしに買うことがあります。
人は、購入する商品の種類に対して、心の中に複数の財布を持っているという、このような概念を心理的財布と呼びます。
日々、1円の安さにこだわっているのに、その時だけは数千円高いスーツにお金をポンと出せるのは、理由があるからです。この主婦のケースだと「元同級生にきれいな格好を自慢したいから」という理由なのかもしれませんし、「元同級生の前でみすぼらしい格好で恥をかきたくない」という理由なのかもしれません。それぞれの理由が両立しているケースもあるはずです。
購買を決定する2つの理由
買い物をする理由は、「それを買うと現状が良くなるから」という「改善パターン」と「それを買わないと現状が悪くなるから」という「防止パターン」があります。
車のドライバーがタイヤを買う理由は「乗り心地や燃費を良くしたいから」「見栄えを良くしたいから」という「改善パターン」と「このままだとパンクしてしまうから」「このままだと車検が通らないから」という「防止パターン」がある、ということです。
ここで大事なことは、「改善パターン」を購買理由にすることが有効な商品と、「防止パターン」を購買理由にすることが有効な商品があり、それらを見極めていかないと効率的な販売に結びつかない、ということです。
商品ごとの購買理由
前述のタイヤに関していえば、典型的な「防止パターン」の商品です。タイヤに乗り心地や燃費の改善を求める顧客や、見栄えを良くしたいと思っている顧客は多くはありません。
にも関わらず「タイヤを交換すると乗り心地が良くなりますよ」「見栄えが良くなりますよ」というセールストークでは効率的な販売に結びつきません。
これに対し「パンクしたくない(安全に運転したい)」というトラブル回避の欲求を持つ顧客は相応に存在します。そこで店頭に破裂したタイヤを飾っておき、すり減ったタイヤのまま運転している顧客にそれを見せながら、危険性を説明します(もっとも、過度に顧客の危険意識をあおるような説明は厳禁です)。
また、「車検で落とされたくない(継続して車を使いたい)」という欲求を叶えるべく、すり減ったタイヤでは車検に通らないことを訴求します。
顧客は、自身の中で購買理由が明確になると、購買行動を起こします。よって、自社の取扱商品がどのような理由で購買されるのかを、検討・分析し、商品ごとにそれに基づいた販促方法をとっていく必要があります。
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