当然のことですが、顧客は来店する理由があるから来店しますし、その理由がなければ来店しません。よって、その理由を作り、訴求することが上手な理容店は集客力が高いと言えます。来店したくなる理由には「髪を切りたいから」プラス「何か」が必要であり、その「何か」というものが顧客に価値を与え、競合店より優れている必要があります。
自店の強みとは、顧客に価値を与え、競合より優れている自店の経営資源(人・物・金・情報)ですので、顧客と競合の動向を調べる必要があります。その上で自店の強みを見出すか、作るかして、顧客へ訴求することにより、顧客が来店する理由が生まれます。
今回のコラムは、ある理容店経営者の悩みを通じて儲かる理容店になるための視点について見ていきます。
「こんなに暇なのは初めて」
ある理容店の経営者が持つ以下の趣旨の悩みに触れる機会がありました。
「今年に入って極端に顧客が減ってしまい、売上も下がっています。開業して20年以上が経過しますが、このような状況は初めて経験します。様々な原因もあるかと思い、対処できるように暇な時間は、店の掃除やカットの練習などをしています。出来る範囲のことはやっているつもりですが、このままではジリ貧となってしまい、生活していくことすら危うくなってしまいます。」
この経営者の悩みからうかがえる具体的な取組みは「店の掃除」、「カットの練習」のみであり、内部環境にのみ視点が向いていることがうかがえます。
まずは、なぜ自店の顧客数が少なくなったのか、大枠で顧客動向を把握する必要があります。このような消費者向けビジネスを展開する際に役立つのが、総務省「家計調査年報」です。
理容店への支出は減少傾向
総務省「家計調査年報」では、二人以上の世帯の1世帯当り年間支出金額を品目ごとに集計し、公表しています。
このうち、理容店に関係の深いものとして「理髪料」「パーマネント代」「カット代」があります。
この「理髪料」が示すものは、理髪料の他に部分刈り代 ・顔そり代・指名料、「パーマネント代」が示すものは、パーマ代の他にシャンプー・カット・トリートメント・セット代及び指名料、「カット代」が示すものは、カット代の他にシャンプー・トリートメント及びセット代、としています。
理髪料とカット代の線引きが曖昧ですが、いずれにせよ理容店へ対する支出と捉え、これらの合計額を2018年6月公表分より年毎に追っていくと以下となっています。
2010年 15,957円
2011年 15,517円
2012年 15,601円
2013年 15,027円
2014年 14,779円
2015年 14,585円
2016年 14,602円
2017年 13,765円
2017年の数値は2010年と比べると約13.7%減少しており、おおかた右肩下がりであることが見て取れますが、その他にも1年間で1世帯あたりの支出が13千円強ということは、1回あたりの支出は僅かなものとなっているか、散髪の頻度が低下していると言えるでしょう。
よって、目安として年間で13千円強よりも高い金額を当店に支払っていただいている顧客は、上得意客であり、絶対に浮気させないように取り組む必要があります。
また、理容店のライバルである美容院向けの支出も見ていきます。
美容院への支出は増加傾向
前述の総務省「家計調査年報」には、「他の理美容代」という項目があります。これは、美顔術料・エステティック・衣装着付け及び化粧代・セット代・毛染め代(ヘアマニキュア・ ヘアカラー)・なでつけ代・美容院の洗髪代、といったどちらかというと美容院向けの支出を示していると考えられ、その額を年毎に追っていくと以下となっています。
2010年 14,182円
2011年 15,051円
2012年 15,417円
2013年 15,754円
2014年 16,827円
2015年 17,126円
2016年 17,210円
2017年 17,746円
2017年の数値は2010年と比べると約25.1%増加しており、このように右肩上がりになっているのは、美容院へ理容店の顧客が流出している可能性もあります。よって、近隣の理容店だけでなく、美容院も競合と捉え、どのような特徴があるのかを調べる必要があります。
また、低価格店やチェーン展開する店舗に価格で対抗することは、収益性を下げてしまう可能性が高いことに留意する必要があります。
これらを踏まえて、自店は競合と比べてどのような強みがあるのかを洗い出し、訴求する必要があります。訴求の方法としては、広告が挙げられますが、これは大きく紙媒体と紙以外の媒体が挙げられます。
自店に合った広告を
紙媒体であれば、チラシやダイレクトメールなどが挙げられます。チラシを活用した訴求方法としては、新聞折込み、新聞を購読していない世帯へチラシのみを届ける「チラッシュ」、商圏の住宅のポストへチラシを投函するポスティング、店頭でのハンドアウト、などが挙げられます。
店頭ハンドアウトの際は、数メートル先にゴミ箱を設置しておき、「読んだらこの先のゴミ箱に捨てて下さい」と言って手渡すと受け取っていただける確率が高まります。
紙以外の媒体であれば、インターネットによる訴求が挙げられます。全世界に訴求することが可能であるネット広告ですが、理容店の場合は、基本的に来店型のビジネスですから、自店の商圏に届く範囲でどのような有効な手段をとることができるのか検討が必要です。
例えば、Facebook広告は地域を限定することが可能です。闇雲に広告を打つのではなく、自店にマッチした広告を活用することが重要です。
広告を打つ際に費用面で厳しい場合は、小規模事業者持続化補助金などの活用も検討に値します。いずれにせよ、客数の減少を克服して儲かる理容店になるために目を向けたいことは、自店の強みであり、それを見出すために顧客動向や競合動向を検討する必要があると言えるでしょう。
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