マスクの高額転売からガソリンスタンドの商道徳を考える

経営の姿勢

需要と価格

 新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄となっていますが、インターネット上では通常価格の10倍で転売されるケースも散見されています。このようなマスクの転売者は買い占めを行うため、余計にマスクの品薄感が増長されている状況です。

 一般的に需要が高まれば価格は上がるわけですが、ホテルや旅館などにおいても、平日よりも週末や年末年始の料金は高額な設定となっています。ですが、このような宿泊施設の価格設定は問題とならず、今回のようなマスクの場合は問題となっています。

 そこで今回のコラムでは、このような需要の変動に応じた価格設定についてガソリンスタンドの事例を取り上げ、商道徳について見ていきます。

タイヤ交換料金を倍にしたガソリンスタンド

 天気予報で雪の予報が出ると、ガソリンスタンドにはスタッドレスタイヤに交換したい顧客が大挙押し寄せます。顧客自身がスタッドレスタイヤを持ち込んでくるケースもありますし、店頭で販売しているスタッドレスタイヤを購入して交換というケースもあります。いずれにしてもタイヤの交換作業料金がかかります。

 あるガソリンスタンドは、天気予報で降雪するとされた日とその前日、つまりタイヤ交換の需要が急激に高まる日は、タイヤ交換の作業料金をいつもの倍にしました。これは同店店長の一存によるものですが、それでもタイヤを交換しないと顧客は雪道を走行できませんから、交換せざるを得ないわけで、結果としてこの店舗は収益が上がりました。

 しかし、タイヤ交換の需要が落ち着いてからしばらくすると、同店店長は店舗の利益を捻出するために不正を働くようになり、追われるように会社を辞めてしまいました。

商売の姿勢

 前述の宿泊施設の料金設定は、平日と週末、年末年始の料金が事前に明確となっています。これに対して、マスクの場合は、その金額で販売されることに事前の告知がありません。また、通常価格に比べて10倍の価格設定は、通常価格とあまりにもかけ離れたものとなっています。このあたりが問題になる・ならないの分岐点になる気がします。

 雪の日のタイヤ交換作業料金を倍に設定したケースは、どちらかというとマスクの価格設定に似ている印象を持ちました。事前に料金を明確にせず、もちろん告知もしていません。また通常の2倍という価格設定も、通常価格からかけ離れすぎている印象です。

 このような価格設定法を「弱みに付け込む」「足元を見る」と言うのではないでしょうか。そのような顧客本位ではない商売、顧客を騙すような商売をする姿勢は、平時の販売姿勢にも現れるもので、当然顧客に支持されるわけもなく、同店店長が追われるように退職してしまったのも納得できる結果ではあります。

 企業として利益を出すことは重要です。納税や雇用という社会的責任を果たすことにも結びつきますし、何より存続することが顧客満足の源泉となります。ですが、儲かれば何をしてもいいわけではないはずです。顧客が納得できる常識的な正しい商道徳を貫くことが、最終的に生き残るガソリンスタンドになると感じましたがいかがでしょうか。

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