私の経験上、ガソリンスタンドの待合室（業界ではセールスルームと呼びます）で何かを待つ顧客は、店舗によって多少の差はあれども、その多くが洗車作業を依頼した顧客のはずです。
この方々は、ガソリンスタンドにとって、利益の不安定なガソリンの他に、利益の取れるガソリン以外の商品を買って下さった、上得意客なわけです。
ところが、この上得意客がガソリンスタンドの待合室で快適に過ごすことが出来ているかというと、あながちそうではない印象があります。快適に過ごすことが出来ない理由のひとつに、待合室に置いている本の質と量が貧弱だという点が挙げられます。
昔の単行本や、数ヶ月前の週刊誌などがほんの数冊だけ、というケースもあり、このような状況で洗車作業を待っている顧客は、上得意客として扱われている感覚が薄くなります。かといって、新しい本ならば何でも置けば良いのかというと、そうとも限りません。
今回のコラムでは、ガソリンスタンドのタイプ別に置くべき本を考えてみます。待合室に置く書籍代を節約したがるスタンド関係者もいますが、書籍代を上回る収益を挙げれば良いわけです。そのポイントは、顧客がガソリンスタンドに洗車を依頼する理由を検討することです。
ガソリンスタンドの待合室に置くべき本1：ストレッチ系
国道や幹線道路沿いに立地するガソリンスタンドで洗車を依頼する顧客は、長距離の運転で蓄積した疲労を少しでも軽くするために、ガソリンスタンドの待合室でゆっくりしたいという心理があります。
休憩だけで待合室を使うのも気が引けるわけで、長距離の運転で窓に張り付いた虫の死骸なども気になりますから、洗車もお願いして、心置きなくゆっくりしようと思うものです。
よって、街道立地型のガソリンスタンドは、肩こり・腰痛の解消法を示したストレッチ系やマッサージ、指圧のツボなどの本が好まれるでしょう。
ガソリンスタンドの待合室に置くべき本2：住まい系
住宅街からさほど離れていない場所に立地する住宅街立地型のガソリンスタンドで洗車を依頼する顧客は、自宅に洗車をするスペースがなく、かといってコイン洗車場に行って自分で洗うほど車のメンテナンスに熱心ではないという背景が伺えます。
よって、もっと広い住居が欲しい方向けに、住宅を購入する際の注意点が記載された書籍を置くだけでなく、逆に今の住居のままで構わないと思う方向けに、住宅のメンテナンス関連の雑誌なども揃えた方が良いでしょう。
ガソリンスタンドの待合室に置くべき本3：コミュニケーション系
ビジネス街に立地するガソリンスタンドの場合、顧客のほとんどが営業車で来店します。泥や埃まみれの営業車で取引先へ訪問するわけにもいきませんし、場合によっては取引先の担当者を自社の営業車に乗せることもあるでしょう。そこで、営業車をキレイにするために洗車を依頼します。
よって、洗車後に伺う取引先での商談を上手く進めるために、雑談ネタの作り方であったり、商談の有利な進め方であったりなど、ビジネスの場におけるコミュニケーション系が好まれるでしょう。
今回のコラムでは、ガソリンスタンドの待合室に置くべき本として、1．ストレッチ系、2．住まい系、3．コミュニケーション系、を挙げました。
注意したいのは、例えば最初に取り上げた街道立地型だからといって、ストレッチ系の本だけを揃えるようなことはしないことです。街道立地型であっても、洗車スペースのない自宅に住むお父さんが来店して洗車を依頼することもあり得ます。よって、上記3種類の本は全て揃え、自店の立地条件によって、その割合を変えたり、万人受けする週刊誌なども多少は揃えておいたりすると良いでしょう。
ある歯科医院では、ありきたりのマンガや雑誌を待合室に置くのではなく、患者の層に合わせた人気マンガを取り揃え、患者からのリクエストにも応じ、一定期間で入れ替えるレンタルサービスを導入したところ「来院するのが楽しみになりました」という声が増加しました。この結果、リピート率が上昇するとともに、口コミによる紹介が増え、集客、固定客化に繋がりました。
ガソリンスタンドも客層に合わせた本を取り揃えてみてはいかがでしょうか。
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