人材を採用するために行う面接で実施するべき質問の具体例

経営の姿勢

相性の5軸

 このコラムでも過去に何度かご紹介したことのある「相性の5軸」は、以下の5つの軸において、自社と応募者が同じ方向に寄っていないと早期退職しやすくなるというものであり、自社にとって辞めにくい人材を判断する基準として雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が提唱しています。

 ①周囲との関係性は、競争を重視するのか、協調を重視するのか
 ②発想の方向性は、革新を重視するのか、伝統を重視するのか
 ③判断の基軸は、理屈を重視するのか、情けを重視するのか
 ④評価の基軸は、行動を重視するのか、思考を重視するのか
 ⑤スピード感は、とにかくスピード重視なのか、緻密重視なのか

どちらに寄っているかの見極め方

 これらの軸においてどちらに寄っているのかを見極める際にお勧めしているのが、ある仮定の状況を想定し、その状況で応募者がとると思う行動の回答で判断する手法です。
 例えば、上記③の「判断の基軸は、理屈を重視するのか、情けを重視するのか」であれば、以下のような状況を想定します。

 「あなたの幼なじみが100万円の借金を申し込んできました。あなたは貯金が80万円しかありません。ですが、クレジットカードのキャッシング機能を使えば別途20万円は調達できます。相手は100万円が必要なわけですが貸しますか?」
 これに対して「貸しません」と答えたら、「幼い頃から今まで、辛い時も苦しい時も一緒に過ごした幼なじみですよ?」と畳みかけ、その回答によって、理屈重視か、情け重視かを判断します。

具体的な見極めの質問

 ひと月ほど前にこの話をある経営者にご紹介し、先日、再度お会いしたところ、その他の4つの軸がどちらに寄っているのかを見極める質問を考えたそうですが、どうもいい質問が浮かばないとのことでした。

 そこで、③の軸は上記の質問を使うこととして、その他の軸がどちらに寄っているのかを見出す質問を一緒に考えましょう、ということになりました。

 ①周囲との関係性は、競争を重視するのか、協調を重視するのか
 これは、一番を目指すタイプなのか、縁の下の力持ちを目指すタイプなのか、ということを判断します。その経営者は、学生時代に運動部に所属していましたが、負けず嫌いだった、つまり一番を目指すタイプであったことを話してくれました。よって、同社の応募者には、学生時代の部活経験、それがなければ、人に負けたくないと思った経験について話していただくことで、競争重視か協調重視かを判断することとしました。

 ②発想の方向性は、革新を重視するのか、伝統を重視するのか
 これは、昨日と同じものでは意味がないと感じるタイプなのか、奇をてらわずに確実に進むタイプなのか、ということを判断します。同社は前面道路から見えるように看板を掲示していますが、もしこの看板をリニューアルするとしたら、どのようにリニューアルするのかを聞くこととしました。現在の看板からガラリと内容・デザインを変える発想であれば、革新を重視するタイプですし、現在の看板の良さを残した発想であれば協調を重視するタイプと判断できるでしょう。

 ④評価の基軸は、行動を重視するのか、思考を重視するのか
 これは、能書きよりもまずは行動するタイプなのか、何も考えずにただ行動するのは無意味と感じるタイプなのか、ということを判断します。例えば、顧客から当初の予定にないご要望をいただいた場合に、まずはそれを実施するのか、いったん考えて上司などに相談して行動を決めるのか、と質問することにより、行動重視か思考重視かが判断できるでしょう。

 ⑤スピード感は、とにかくスピード重視なのか、緻密重視なのか
 これは、仕事は粗くてもまずはスピードを大事にするタイプなのか、仕事は遅くても丁寧に行うタイプなのか、ということを判断します。今回ご面談した経営者は女性なのですが、料理は幅広くそつなくこなす方でした。そこで、例えば、〇時にカレーライスが出来上がるのを家族みんなが待っている状態で調理をしていた場合に、自身の料理に関するスキルが発揮できたかどうかはともかく、〇時に間に合わせるように作るのか、〇時をオーバーしても納得のいくカレーライスを作るのか、といった質問で判断できるでしょう。

 上記のように、その経営者の体験をベースに見極めの質問を考えていきました。人材を採用するために行う面接で実施するべき質問の具体例は、経営者もしくは面接担当者の体験や興味のあることによって違ってくるのだと思います。

 ただし、質問を考えるだけでなく、自社はどちらの軸を重視する風土なのかを見極めておくことは言うまでもありません。

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