高齢者をビジネスに活用する

戦略の考え方

法律で定められている高齢者の雇用

 高齢者の雇用というと、新規採用と自社で定年を迎えた方の継続雇用がありますが、人材不足の折、定年を迎えた方を継続雇用して人材不足を緩和させようという動きが活発化している印象があります。

 平成25年施行の高齢者雇用安定法では、定年を迎えた従業者が希望すれば継続雇用をすること、そして65歳まで働ける制度を導入することが義務付けられました。そこで多くの事業者が60歳の定年を迎えた従業者に対して、いったん退職させ、1年間の雇用契約のもと再雇用を行い、当該契約を65歳まで継続することとしています。

 この改正法では、65歳以降も働ける制度の導入は義務づけられていないため、多くの事業所では、65歳以降の継続雇用に関しては規則を設けていません。しかし、実態は65歳以降も継続雇用されている高齢者は相当数存在しているわけです。

雇い止めのトラブル事例

 さて、ある病院であったトラブルの事例です。病院は患者数に対して看護師の数が定められているため、看護師の確保が大きな課題となっています。当該病院も上述の制度を導入し、定年後の看護師が多数、活躍していました。
 そして、看護師の数を確保しなければならないため、病院側が懇願し、多くの看護師が65歳を超えても勤務していました。なお、65歳以降の継続雇用制度は定められていませんでした。

 そんな中、70歳を迎えたある看護師は、加齢のせいか、手が震えるようになり、患者に注射をすることが困難になりました。そこで病院側は、次の雇用契約の更新はないと雇い止めを通告しましたが、ここで当該看護師が以下の趣旨を主張しました。

 「私は、65歳を過ぎたら病院を辞めて、悠々自適な生活を送りたかった。しかし、病院側から懇願されて、老体に鞭を打ってこれまで仕事をしてきました。それが、いざ手が震え出すと、こんなに簡単にほっぽり出すんですか。私は使い捨てなんですか?」

 当該病院は、院内に労働組合がないため、看護師は、地域内の同業種や隣接業種などの労働者が集まって組織している労働組合、いわゆるユニオンに所属していました。当該看護師は、今回の雇い止めをユニオンに相談し、再度、病院側と話し合うことになりました。
 病院側としては、人手も限られることから、話をこじらせたくはありません。結果として200万円の和解金を支払って、当該看護師に退職していただくことになりました。

高齢者を活用する留意点

 自社で定年を迎えた方の継続雇用を行う場合は、法律に則った制度を導入することに加え、どのような状態になったら雇い止めをするのかを明確にするとともに、勤務状況を評価し、そのフィードバックを通じて次回の雇用更新の可能性を伝えておく必要があります。

 何年も何回にもわたる雇用契約の更新をしておきながら、1年更新の契約だからといって、次年度の雇用はありません、と通告するような雇い止めは、当該従業員の期待を裏切ったという点では決して望ましいものではありません。
 また、高齢者に対して、事業者側は昇進・昇格という観点を破棄します。しかし、昇進・昇格をさせないということと、評価をしないということは同義ではありません。人は、人のために働く以上、人からどのように評価されているかを知ることは、重要なことなのです。

 なお、高齢者が活躍している事業所の評価表を参考までに掲載しておきます。

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