レジ金の過不足を無くすには、現在いくら過不足が発生しているのか、という情報を共有することが必要です。
5年後に新紙幣が発行されることが発表されました。発行当初の新紙幣はピン札ですが、これがレジの中にあると、ピン札同士がくっついていることを確認せず、お釣りとして紙幣を一枚多く渡してしまうことがあるため、注意が必要です。そのような不注意によるレジ金の過不足の他に、不正によるレジ金の過不足が発生することもあります。
今回のコラムでは、どのようにしたらレジ金の過不足を無くすことができるのかを見ていきます。
1.レジ金過不足の対策
(1)レジ金過不足の事例
あるガソリンスタンドでアルバイトスタッフとして働く大学生のA氏は、ある日、ほんの出来心でレジから1,000円を抜き、自分のポケットに入れてしまいました。
翌日、恐る恐るといった感じで出社しましたが、店長含め全員がいつもと同じように仕事をしています。スタッフ間の会話でも、伝達事項を共有するスタッフ用掲示板にもレジ金に関する情報は特に出てきませんでした。1日に社員の人が何度かレジ締めをして、現金売上と現金在高を照合しているにも関わらず、です。
そこで、また1,000円をレジから抜いて、自分のポケットに入れてみました。翌日も職場に何の変化もありません。レジ内の釣銭をくすねても別に大丈夫なのか?とレジからお金を抜き続けた大学生アルバイトスタッフのA氏。ついに抜き取った累計額が30万円に達したところで、店長が本社に相談をしました。
本社の現地調査の結果、その犯人がA氏であったことが分かりました。30万円の過不足が発生した原因はA氏の意識にあります。ですが、その意識を醸成させた店舗側に問題はなかったのでしょうか。
廃校になった校舎の窓ガラスのどれか1枚にひびが入ると、立て続けに他のガラスも割られると言います。よって、廃校になった校舎の美観を保とうと考えるなら、1枚にひびが入ったら即対応することが重要です。
上記のレジ金過不足の事例でも1,000円の過不足が発生した時点で即対応が必要でした。それを怠ったことから、被害額が大きくなってしまいましたが、では、どのような対応が必要なのでしょうか。
(2)ダイエット成功の秘訣
私は、2年ほど前からダイエットに取組み、1年間で体重を10キログラム落とし、その状態が継続できています。その取組みに大きな影響を与えたのが、無料のダイエットアプリ「あすけん」です。
このアプリは、自身の体のデータの他、目標体重とそれを達成したい期間を設定すれば、1日の摂取カロリーの限界値を算出してくれます。そして、毎回の食事内容を入力することで、1日の摂取カロリーの限界値を超えたか否かが分かるようになっています。
私はこれを活用してカロリーコントロールをするようにしましたが、日々の記録でカロリーの過不足を把握するようになると、意識がカロリーへ向かいます。
コンビニでパンを買うとき、清涼飲料水を飲むとき、様々な食品を口にしようとする時にカロリーが意識されます。ごはん1杯分のカロリーが日本酒2合分のカロリーとほぼ同じであることもこれで知りました。これと同じことがロードサイド店舗のレジ金過不足にも活用できます。
(3)認識を共有する
私がガソリンスタンドの店長をしていた頃、現金売上高とレジ金の照合作業を1日に3回実施していました。照合の結果は、帳票に記録して保管しておきました。
ですが、一時期、レジ金の過不足が頻繁に発生したことがあり、照合作業を1日に6回に増やしました。さらに照合の結果は、帳票に記録するだけでなく、スタッフルームのホワイトボードに以下のように書き出すようにしました。
7:00~10:00 ±0円
10:00~13:00 ▲10円(▲はマイナスを意味しています)
13:00~16:00 ▲10円
16:00~19:00 ▲10円
19:00~22:00 ▲10円
22:00~23:00 ▲10円
上記の事例では、10:00~13:00の間に10円の過不足が発生しており、その後は新たな過不足は発生していないことが分かります。つまり、10:00~13:00にシフトに入っていたスタッフがミスをした可能性があることが分かります。
これをスタッフはスタッフルームに入室するたびに目にすることになり、自ずと意識がレジ金の過不足に向かうこととなります。このポイントは、情報をオープンにして、認識を共有することです。反面、レジ金の過不足を防止するためにやってはいけないこともあります。
(4)過不足分をスタッフに負担させてはいけない
レジ金の過不足分をペナルティ(懲戒処分)としてスタッフに負担させる店舗があります。この場合、労働者の故意や重大な過失を立証できないにも関わらず、ペナルティを科しているのなら、懲戒権の濫用として無効になってしまうことに留意しておく必要があります。よって、過不足分をどうするかではなく、過不足を防止するためにどうするか、の視点が重要です。
今回のコラムでは、不正によるレジ金過不足の事例、その対策として過不足状況の認識と共有について見てきました。レジ金の過不足が発生するロードサイド店舗がとるべき対策とは、何時から何時までにいくらの過不足が発生したのかを全スタッフが把握できる仕組みを作ることである、と言えるのではないでしょうか。
2.不正防止に関するコラム
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■小売店舗におけるクレジットカードを使用した不正の手口
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