顧客が持つ「べき論」が顧客自身を傷付ける
ある女性タレントが、タクシーに乗車し、運転手にタメ口をきかれたことに対して「私はお客だ」「いい気分だったのに最低」と憤慨し、Twitterで怒りを露わにしていることが報道されました。
「私はお客だ」という発信から、彼女は「タクシー運転手は、お客様に丁寧語を使うべき」という「べき論」を持っていると思います。そして、その「べき論」に運転手の口の利き方が刺さったから心が傷付き、「いい気分だったのに最低」となってしまったのでしょう。
これは、お客様が傷付いたケースですが、従業員が傷付くケースも当然あります。
従業員が持つ「べき論」が従業員自身を傷付ける
不特定多数のお客様と接するロードサイド店舗で働くスタッフは、顧客や同僚、上司からの心ない言葉や態度で傷付くことがあります。
例えば、レジにお金を投げるように出されて傷付いたスタッフを私は知っています。彼は「お客様はレジにお金をそっと置くべき」という「べき論」を持っていて、顧客の態度がそれに刺さったので傷付いたと言えるでしょう。
この傷付く回数が多ければ多いほど、また、傷が深ければ深いほど、「やってられない」「頭に来た」というふうに、ベクトルが「離職」へ向くことになります。
では、店舗スタッフが傷付かないようにして、退職を防ぐためには、経営者・管理職としてどのようにマネジメントをしたらよいのでしょうか。
持っている「べき論」に気付くこと
相手の言葉や態度が刺さって傷付く「べき論」は手放すことが必要です。そのためには、まず、手放した方がよい「べき論」に気付く必要があります。
その好機が、傷付いた時であり、表現を変えれば、イラッとした時、ムカついた時なわけです。その際に、自分はどんな「べき論」を持っているのか、ということに気付くことができれば、手放すものが何なのかが分かります。
手放すものが何なのかが分かったら、手放す努力が必要です。長年つきあってきた「べき論」ですので、簡単に手放すことはできないはずです。重要なのは手放そうと決めることです。
なぜ160km/hのボールを投げられないのか、と言われても…
傷付いた人は、傷付けた相手を変えようとします。ですが、その人はそういう人なのです。
大リーグで活躍する大谷翔平選手に「なぜ時速160キロメートルのボールを投げられないのですか」と言われても、無理なわけです。傷付けた相手を変えようとすることは、時速160キロメートルのボールを投げることを強要することと同義と言えるでしょう。
繰り返しになりますが「タクシー運転手は、お客様に丁寧語を使うべき」「お客様はレジにお金をそっと置くべき」という「べき論」を手放すことにより、それをされても傷付きにくくなります。
従業員が傷付かなければ、心の安定は保たれ、離職する可能性は低くなります。給料を上げずに店舗スタッフの離職率を下げるマネジメントとは、従業員自身が傷付かない選択肢を選ぶことができるように、「べき論」を手放す重要性を伝え、実践させていくことであると考えます。
そのためには、経営者・管理職が、ご自身を傷つける「べき論」を手放すことから始めたら良いと思いますが、いかがでしょうか。
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