ガソリンスタンドの接客コンテスト
かつてセルフサービスのガソリンスタンドが存在していなかった頃、ガソリンスタンドにはメーカー毎に実施される「ドライブウエイサービスコンテスト」という接客コンテストがありました。
各店舗からこのコンテストに出場する従業員を選び、運営会社毎に社内予選を行います。同じメーカーの製品を扱う他の運営会社も同様にして代表を決め、各社の代表が集まります。
コンテストの内容は、出迎え、誘導、受注、給油開始を経て、洗車や点検のお勧め、給油完了、会計、見送りというガソリンスタンドにおける一連の接客に関するレベルを競います。顧客役のドライバーが入店をして模擬接客を行っているところを審査員が採点し、得点の多寡で優勝者が決まります。
「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」、「オーライ、オーライ」と普段の接客では絶対に出さないような大きな声を出し、最後にお礼を述べる際は声が枯れているという有様でした。
当時、一般社員の私は、普段の接客で実施しないことを競うことにどんな意味があるのか甚だ疑問でしたが、勝ち進むにつれ、店長も本社の方々も喜んでくれるので、優勝目指して日々練習に励んだものでした。
実務に沿ったマネジメント
会社を経営する目的は様々あってしかるべきですが、会社は継続してこそ意味があるはずです。よって、日々の経営活動は会社の継続に繋がる活動でなければならないはずです。しかし、見栄や体裁のために大事な時間をコンテストの開催、練習に割くこと自体が無駄だったと言っても良いでしょう。
「経営の神様」と呼ばれたパナソニック株式会社の創業者である松下幸之助氏は、ある日、事業責任者に対して、部下から提出させている書類を綴じこんだファイルを全て社長室に持ってくるように命じました。結果として、社長室にはファイルが山積みとなりました。
数日経ち、ある事業責任者が「社長、このファイルはどうしても使いたいので持っていきたいのですが」と言って、一冊のファイルを自部署へ持って帰りました。別の日には別の事業責任者が1冊のファイルを同様の理由で持って帰りました。
ひと月が経過し、そのファイルの山は、まだ残っていました。松下氏は事業責任者を集め、「ここにあるファイルの山は、ひと月経っても必要とされなかったファイルの山である。このファイルに綴じこまれた報告書は必要ないと判断する」と述べ、それらの報告書は廃止しました。
実務に沿ったマネジメントがここにあります。これにより、多くの報告書が廃止され、業務が効率化されました。
翻って、そのコンテスト用の接客がどんなに好感度が高いものであっても、実務に沿わないものであるならば、磨く必要はないのです。ドライブウエイサービスコンテスト用の接客が販売力向上に役立たたなかった理由がここにあります。
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