安定的に売れる接客3つのコツ

人材育成

 「本当に持ってたり、使ってたりしてるんですかねぇ…」ある女性経営者が呟きました。
 その経営者は、人並み以上に身だしなみに気を遣い、ブティックや化粧品店へ頻繁に来店しますが、店舗スタッフから「そのブラウス、私も持っているんですよ」「このリップ、私も使っているんですよ」といったセールストークを展開されるのだそうです。

 そのようなお勧めをされると「この綺麗なお姉さんも持っているのなら…」と思い、つい買ってしまうそうなのですが、ふと、猜疑心を抱いたと言います。それが冒頭の呟きに繋がっています。

 店舗スタッフとしては、そのように思わせた時点でアウトでしょう。顧客がどう思うかは顧客の勝手ですが、店舗スタッフはプロである以上、真意を正確に伝えることが必要です。なぜなら、顧客は一度でも猜疑心を抱くと、来店のモチベーションが落ち、仮に再来店したとしても、購買に対してより慎重になるからです。

 今回のコラムでは、そのような猜疑心を抱かせず、安定した売上を出すことのできる接客のコツを見ていきます。

安定的に売れる接客のコツ1:雑談をする

 私がガソリンスタンドの店長を務めていた頃、私の右腕であった店長代理にはファンが大勢いました。なぜファンになるのかというと、彼は商売抜きで雑談をするのです。通常は給油中の立ち話で済むのですが、それが長くなりすぎ、椅子を持ってきて顧客と腰掛け、人生相談めいたことも始まることが多々あったくらいです。

 このような関係になると、オイルもタイヤも洗車も、その顧客の車に関することは全て店長代理にお任せされるようになります。

 初来店の顧客が、いきなり上得意客になることは稀な話です。初対面の女性にいきなり「結婚して下さい」といって成婚するケースは多くはないでしょう。接客も同様で、商売抜きの雑談は顧客に安心感を与え、信頼関係を醸成させ、少しずつ上得意客へ育つ可能性を高めます。

 ただし、売上が属人的にならないように、店長代理の接客手法を店舗スタッフで共有し、スタッフ全員がファンを持ち、ひいては店舗のファンになってくれるような働きかけも必要です。例えば「私がいなくても、スタッフにこのように伝えていただければ対応できるように引き継ぎをしておきます」といった形です。

安定的に売れる接客のコツ2:数字でものを言う

 全国の企業のうち99.7%は中小企業です。そのうち約85%は小規模事業者です(中小企業庁ホームページより)。
 私は、中小企業の経営者向けに講演をする際には、中小企業、とりわけ小規模事業者が元気になることが景気を良くすることに直結する根拠として、よくこの数字を持ち出します。

 また、平成6年度末に全国で60,421軒あったガソリンスタンドが、平成31年度末では、30,747軒まで減少しています(経済産業省ホームページより)。
 私は現在、ガソリンスタンドのご支援をする際には、この数字を持ち出し、現在営業を継続できているということは、選ばれし存在なんですよ、と元気付けの根拠として使い、さらに、なぜ継続することができたかを伺い、強みを発掘していきます。

 このように、客観的な統計データを数字で示すことで説得力が向上します。雑談で関係性を築いた後に、商品説明をする機会を得たなら、「そのジャケットは、先月の売上ベスト3でしたよ」「このファンデーションは当社内では先週○個も売れたんですよ」などと数字でものを言うと説得力が向上する可能性が高まります。

安定的に売れる接客のコツ3:自身の体験を語る

 客観的な統計データと併せてお伝えした方が良いのは、スタッフご自身の体験です。冒頭の経営者は「そのブラウス、私も持っているんですよ」「このリップ、私も使っているんですよ」と言われ、猜疑心を抱きました。この原因として、スタッフの発言に臨場感が無いことが挙げられます。

 「そのブラウスは、着ると風通しが良いことが凄く実感できます。実際私は、暑い日は必ずと言っていいほどこのブラウスを着ているんです」
 「このリップは、グラスに口をつけても色移りがしにくいんです。ですから、食事後の化粧直しも手間がかからないんです。私は勝負デートの際は、このリップを使っています」

 このようにご自身の体験を端的に語るのは、臨場感を与え、顧客を引き込み、結果として説得力を向上させます。

 今回のコラムでは、安定的に売れる接客3つのコツとして、1.雑談をする、2.数字でものを言う、3.自身の体験を語る、を挙げました。重要なことは、雑談は売ることを目的とするのではなく、信頼関係を築くことを目的とすることです。

 店舗を運営しているわけですから、売りたい気持ちは理解できますが、その意識が強すぎると顧客に伝わってしまい、警戒感を抱かせます。結果として、雑談から数字や体験をお伝えするという商品説明に進む前に顧客は退店してしまいますので、留意したいところです。警戒感を抱かせない雑談も小売りの現場に身を置くプロとして必須のスキルと言えるでしょう。

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