もしガソリンスタンドで接客時のマスク着用が禁止されたら…

　イオングループが接客時のマスク着用を原則として禁止しました。その理由は、表情が分かりにくく声も聞こえづらくなるため、顧客との円滑なコミュニケーションの妨げになるだけでなく、風邪や体調不良のイメージを持たれ、不安を抱かれる場合があるから、としています。

　これに対して、様々なツッコミを入れることは容易ですが、今回のコラムでは、このような施策をガソリンスタンドの現場で実施したらどうなるかを通じ、生き残るガソリンスタンドを考えてみたいと思います。

もしガソリンスタンドで接客時のマスク着用が禁止されたら…人手不足が深刻になる

　ガソリンスタンドで働くスタッフにとってマスクの必要性が高まるのは、花粉が飛ぶ春先です。花粉症で悩むスタッフにとって、この時期、マスクは手放せません。それを禁止されたら、このようなスタッフは辛いです。

　「レギュラー満タンでよろしいでしょうか」と接客している最中に涙が出て、鼻水が垂れ、くしゃみが止まらない。通常、涙が出て、鼻水が垂れる場合は悲しみが止まらない時ですが、花粉症はくしゃみが止まらないという特徴があります。

　「レギュラー（クシュンッ）、満タンで（ズルズル）、よろぢいでしょうか」と接客されて顧客はどう思うか。表情が分かりやすく、声も聞こえやすいからそれでよし、とは思わないでしょう。単に見苦しいだけです。

　花粉症の症状が悪化し、顧客から冷ややかな視線を浴びせられたアルバイトスタッフは退職を考えるようになります。人手不足の昨今、他にも働く場所は沢山あるのです。このようにして、そのガソリンスタンドは人手不足が深刻になっていくことが想定されます。

　人手不足が深刻になると、オイルやタイヤといった利益率の高いガソリン以外の商品（油外商品）が売れなくなってきますので、生き残りは厳しくなってくるでしょう。

もしガソリンスタンドで接客時のマスク着用が禁止されたら…顧客満足度が低下する

　ガソリンスタンドで扱う商品の多くは顧客の目に触れないことから、ガソリンスタンドはサービス業の要素を持つ業種と言えます。このサービス業は、スタッフと顧客の関係性により顧客満足度が決まります。理容店・美容室をイメージしていただくと良いと思います。

　そして、高い顧客満足を構築できるスタッフは高い従業員満足を得ており、その要素は、標準化、能力開発、モチベーションの3つとされています。

　顧客や他のスタッフに風邪をうつしたくない、花粉症が酷いなど、正当な理由がありながらマスクを着用できない状態は、モチベーションに影響し、従業員満足度を低下させます。

　ハーズバーグの動機付け＝衛生理論では、衛生要因が満たされないとモチベーションが大きく下がることが分かっていますが、この衛生要因のひとつに労働環境があり、マスクを着用できないことはこの労働環境が悪いということになります。

　よって、繰り返しになりますが、モチベーションの低下から従業員満足度が落ち込み、結果として顧客満足度が高いものにはならず、客数や客単価に影響を及ぼし、生き残りは厳しくなってくるでしょう。

　ここまで、ガソリンスタンドで接客時のマスク着用が禁止された場合のデメリットを見てきましたが、マスク着用が容認された場合のデメリットもあります。よって、これにどう取り組むべきかも見ていきます。

マスク着用時は、マスク非着用時よりも良い接客を心掛ける

　冒頭でご紹介したように、イオングループがマスク着用を禁止した理由は、①表情が分かりにくく声も聞こえづらくなるため、顧客との円滑なコミュニケーションの妨げになる、②風邪や体調不良のイメージを持たれ、不安を抱かれる場合がある、というものであり、これがマスク着用のデメリットと言えます。

　まず、マスク着用時には、いつもよりも笑顔を出したり、身振り手振りを大きくしたりすること、なるべくはっきりと声を出すことにより、①のデメリットの最小化が可能です。これにより、顧客に元気なイメージを与え、②のデメリットの最小化が可能です。そして、このような接客ができないくらい体調が悪いなら、休ませるべきです。

　今回のコラムでは、もしガソリンスタンドで接客時のマスク着用が禁止されたら、人手不足が深刻化すること、顧客満足度が低下することを挙げ、マスク着用のデメリットの克服策を述べました。

　年末商戦も佳境に入り、また、寒さが本格化してきますが、ガソリンスタンドの経営陣は、現場におけるマスクの取扱いについて、しっかりと見解を示し、業績向上に繋げて生き残っていただきたいと思います。