洗車機の操作代行をするセルフスタンドが生き残れない理由

顧客満足

残念なセルフサービスのガソリンスタンド

 ある方が、行きつけのセルフサービスのガソリンスタンドでドライブスルー洗車機を利用しようとした時の話です。洗車もセルフサービスですから、顧客は自分で洗車機の操作をする必要があります。その洗車機には先客が1台おりましたが、操作にてこずっているようでした。

 しばらくして、その先客は洗車機の操作を諦めて「どうぞ洗車を先にやってください」と言いに来ました。お見受けしたところ、70歳を超えた女性でしたが、「どうしたんですか」と伺うと「いつもは店員さんが駆け寄ってきて、洗車機の操作をしてくれるんですが、今日は忙しいのか来てくれなくて、私1人じゃ無理なんです」とのこと。

 そこで、洗車機の操作を教えてあげたとのことでした。このエピソードから言えることは、このガソリンスタンドは残念な店だということです。なぜ残念なのか。今回のコラムでは、洗車機の操作代行をするセルフスタンドが生き残ることが困難な理由とそれに関連して、代行ビジネスの危うさを見ていきます。

洗車機の操作代行をする理由

 前述の70代と思しき女性に対して、ガソリンスタンドのスタッフはなぜ毎回毎回、洗車機の操作代行をしていたのでしょうか。推測されるのは、教えても分からないだろうという決めつけがあったこと、教えるよりもスタッフが操作した方が早いと判断したことでしょう。

 ですが、これは顧客のリスペクトに欠けている考え方です。今や高齢者がスマートフォンでQR決済をする時代です。ドライブスルー洗車機の操作など何度か教えてもらえればマスターできるはずです。

 そのリスペクトに欠けた姿勢が、今回のように、何らかの理由で操作代行できない場合に、この高齢客を困らせるとともに、他の顧客に迷惑をかけることに繋がり、結果として顧客満足度が低下することとなります。

 その姿勢は、本来最も売りたいオイルやタイヤなどガソリン以外の利益率の高い商品(油外商品)を販売する際にも滲み出ることでしょう。結果として油外商品は売れず、収益性に苦しむこととなります。

 前述の高齢客に対しては、しっかりリスペクトし、操作の仕方を教えるべきでしょう。1回で分からなければ2回、3回と繰り返し教える必要がありますが、リスペクトしていれば苦にはならないはずです。

 さて、この代行についてもう少し深く見ていきます。

代行ビジネスのリスク

 ガソリンスタンドで取り扱うサービスの多くは代行ビジネスと言えます。例えば洗車、車検、夏用タイヤから冬用タイヤへの交換などは、顧客自身でも実施できることですが、ガソリンスタンドなど業者に有料で依頼した方が、早く確実に労力を使わずに実施できるため、顧客は代わりに行ってもらいます。

 そして、この代行ビジネスは、仕上がりに大きな差がなければ、価格競争に陥りやすいと言えます。ガソリンはどの店舗で給油しても品質に差がないことから、価格競争に陥りました。その構図と同じということです。

 では、価格競争に陥らないため、他店よりも品質で大きな差を設けようとしても、実際問題として困難なわけです。そこで、スタッフと顧客の関係性がポイントとなってきます。

 私がガソリンスタンドの運営会社に勤務し、店長を務めていた頃に、店長代理として私の右腕となってくれていたある方は、よく顧客の人生相談に乗っていました。ここまでの関係性を築くことができると顧客としては、車のメンテナンスは全て彼にお任せとなり、多少の価格差は気にしないで油外商品を購入してくれるだけでなく、浮気もしなくなります。

 なお、ガソリンスタンドのスタッフが顧客との関係性を構築する具体的な方策に関しては、以下のコラムを参考にしてください。
 ガソリンスタンドで顧客との関係性を構築する5つの方法

 今回のコラムでは、セルフ洗車の操作代行を通じた商売の姿勢と、それに関連して代行ビジネスで生き残る方策を見てきました。リアル店舗の武器は、フェイストゥフェイスの接客ですので、ぜひそれを用いて関係性を構築していただきたいと思います。

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