新規事業のアイデア抽出にはパターンがある
私は、2009年にガソリンスタンドの運営会社を退職し、経営コンサルタントとして創業しました。しかしながら、クライアントを抱えた状態だったり、豊富な実績を引っさげたりした創業ではなく、創業後に仕事をいただける予定だったエージェント様からの仕事もほとんどなく、創業当初はとても苦労しました。
そのような中、各地の商工会、商工会議所とお付き合いのあるエージェント様から、商工会、商工会議所に所属する会員事業者様の経営革新計画の策定を支援するお仕事をいただく機会に恵まれました。
経営革新計画は、事業を1年以上継続してきた事業者様が、新規事業を行う際に、計画書を作成し、それを各都道府県が審査し、一定レベルの内容であると判断されると、県知事が承認する、というものです。
【参考記事】経営革新計画の承認制度
このお仕事をきっかけに、通算で100を超える様々な事業者様の経営革新計画を策定してきました。その中には、ご自身で新規事業のネタを見つけて経営革新計画策定のご支援を受ける方もいれば、何か新しいことをやらなければいけないと考えてはいるものの全くノーアイデアで経営革新計画策定のご支援を受ける方もおられました。
ノーアイデアで経営革新計画を作成しようとすると、当然のことながら、新規事業のアイデアを出さなければなりません。このアイデア出しに、最初は四苦八苦したものですが、ある程度実績を重ねてくると新規事業のアイデア出しにパターンがあることが分かってきました。
「新規」事業という言葉の定義
まず、何をもって「新規」というのかを定義します。「日本で初めて」とか「業界で初めて」という事業は確かに新規事業と言えますが、そこまでハードルを上げなくても、十分戦えますし、経営革新計画の承認取得も可能です。
ここでいう「新規」事業とは、以下を指します。
1.自社にとって初めての取組みであること
2.新たな製品・サービスもしくは、製品・サービスの新たな提供の方法であること
3.上記2.が同業他社で相当程度普及していないこと
つまり、地域の競合がやっていなければ新規性ありと判断する、ということです。よって、地域の競合動向をある程度把握しておくことが必要です。これをないがしろにして、闇雲に新しい事業を探してもなかなかアイデアは出ないものです。
アンゾフの成長ベクトルを活用する
下図は、アメリカの経営学者イゴール・アンゾフが提唱したアンゾフの成長ベクトルです。
縦軸に市場(顧客)を、横軸に製品・サービスをとり、それぞれを既存・新規に切り分けた上で組み合わせると4つの象限が現れます。以下、各象限の説明です。
1.市場浸透戦略:既存の製品・サービスを、既存の顧客に提供していく戦略
2.新市場開拓戦略:既存の製品・サービスを、新規の顧客に提供していく戦略
3.新製品開発戦略:新規の製品・サービスを、既存の顧客に提供していく戦略
4.多角化戦略:新規の製品・サービスを、新規の顧客に提供していく戦略
新規事業のアイデアを探す際に、まず現在、自社はどのような市場浸透戦略を採用しているのかを検討します。つまり、どのような顧客に、何を売っているか、を検討します。
その上で、もし、既存の製品・サービスを、新規の顧客に提供していくとしたら、どのような顧客が想定できるのかを検討します。これが新市場開拓戦略へ進む方向です。
それと同時に、もし、新規の製品・サービスを、既存の顧客に提供していくとしたら、どのような製品・サービスが考えられるのかを検討します。これが新製品開発戦略へ進む方向です。
ところが、新事業のアイデアがない事業者様は、多くの場合、既存の製品・サービスが何で、既存の顧客が誰なのかを把握していません。
既存の製品・サービスは、シャンプー、カット、ブローであり、既存の顧客は、来店した顧客、と答えた美容院がありました。これは、現在の事業の結果であり、戦略とは言えません。
戦略的に考えるなら、既存の製品・サービスは「都心の美容室で鍛え抜かれた高いセンスのカット技術」であり、既存の顧客は「40代の仕事を持つ女性」といったレベルで検討する必要があります。
よって、市場浸透戦略が明確になった時点で事業活動はかなり前向きなものとなります。その上で、新市場開拓戦略、新製品開発戦略を検討することとなります。
その他の新事業アイデア抽出のパターン
上記のパターンの他に下記のパターンもあります。
1つめは、過去へ対する下記の視点です。
・かつて取り組もうとして諦めた事業はないか
・かつて取組んでいた事業を復活できないか
・経営者の経歴を活かせないか
2つめは、現在へ対する下記の視点です。
・もし好きにお金が使えるとしたらやりたいことはないか
・現在取り組んでいるが停滞している事業はないか
・最近始めたばかりの事業はないか
・投資により発生した余力をどう活かすか
・来ていただいた顧客に売っているなら顧客の元へ出向いて売る
・BtoBからBtoCへ、BtoCからBtoBへ
・「モノ」発想から「コト」発想へ、「コト」発想から「モノ」発想へ
【参考記事】「モノ」を提供する店舗と「コト」を提供する店舗の違い
アイデアがないことが問題なのではありません。アイデアの出し方を把握していないことが問題なのです。今回ご紹介した発想方法で新規事業のアイデアを検討してみてください。
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