「私はもう、知っている。」ロードサイド店舗には、かつて働いていた元アルバイトスタッフが顧客として来店するケースがあります。その彼ら彼女らが抱くのはこのような、上から目線的な気持ちです。まるで北斗の拳の主人公、ケンシロウのようです。
顧客として訪れる元スタッフは、店の内部事情を知っており、現在のスタッフの先輩でもあることから、上から目線で発言をし、行動したがります。人間には承認欲求があることを踏まえると、これはごく自然なことなのかもしれません。
ここで問われるのは、店舗としてスタッフと顧客との境界線をしっかりと引いて、適切な距離をとり、行き過ぎた元アルバイトスタッフの行動を抑制できるか、ということです。今回のコラムでは、あるドーナツ店での不適切動画を通じて、この適切な距離をとる重要性を見ていきます。
適切な距離をとる意義
チェーン展開をするドーナツ店で、30年前に同店でアルバイトをしていた男性が、先日調理場に入り、ドーナツを作る器具に触る様子などの動画を撮影し、ネット配信での生中継、動画投稿サイトにも掲載したことが分かりました。
この男性は、アルバイトスタッフ時代、現在の店長と同僚であり、店長は聞き取りに対し、撮影には気付いたが、「先輩だったので止められなかった」と話しているとのことです。つまり、かつて自分の先輩だったので、その方が店舗を辞めても適切な距離をとれなかった、ということです。
お客さんだけどお客さんじゃない。それが当店で働いていた元スタッフの来店が意味するものです。お客さんとして接するべきか、お客さんじゃない人として接するべきか。
この店長、柔軟な対応といえば聞こえは良いですが、つまりは「なあなあ」にしていたわけです。そして、この店長の姿勢は、次に示すブロークンウィンドウ理論に結び付いていきます。
ブロークンウィンドウ理論とは
ブロークンウィンドウ理論は、割れた窓を放置していると他の窓も割られやすくなるという理論です。店舗運営のどこかに「なあなあ」な姿勢が見えると、その他のシーンでも「なあなあ」が起こるものです。
辞めた元アルバイトスタッフが、店長不在時に来店し、社員価格で給油をし、無料で洗車をしていることが常態化していたというガソリンスタンドもあります。小さな「なあなあ」は、大きな「なあなあ」に、たまに起きる「なあなあ」はしょっちゅう起きる「なあなあ」へと育っていきます。
店側として元アルバイトスタッフはスタッフルームや厨房には立ち入らせないことを徹底していかないと「なあなあ」はどんどん肥大化していくことに留意する必要があるでしょう。
さらには、辞めていくアルバイトスタッフへの意識を変えていくことも必要です。
卒業とともに意識を変えさせる
学校を卒業して社会人になっても学生気分が抜けない人がいます。その店舗のアルバイトを卒業しても、その店舗のアルバイト気分が抜けない人もいるでしょう。
よって、その気分を断ち切ってあげるのも店舗側の役割と考えます。具体的には、退職時に以下のような項目を記した誓約書にサイン、押印を求めることも一考です。
「ユニフォームはクリーニングをして、退職日から〇日以内に返却する」
「来店時はスタッフルーム、厨房には入室しない」
「提供している商品に社員割引は利かない」
「元アルバイトスタッフであることを利用して、既存スタッフの行動に制限をしない」
「必要以上に長居をして、店舗業務に支障をきたすようなことをしない」
実は、私がガソリンスタンドで一般社員だった頃、私の知らない元アルバイトスタッフが頻繁にやってきていました。来店の都度、スタッフルームで店長とおしゃべりをしており、苦々しく思っていました。そのように思っていたスタッフは私だけではありませんでしたが、当時の店長は黙認していました。
そんなある日、その元アルバイトスタッフと現在働いているスタッフが口論になってしまいました。このように、あらぬストレスを感じさせないためにも、適切な距離をしっかりとる必要があります。
「私はもう、知っている。」などという上から目線の気持ちは、アルバイト先の卒業とともに捨てさせることが重要なのです。
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