店舗スペースを有効活用できていない事業者の共通点

戦略の考え方

ある地方百貨店の生き残り戦略

 ある地方へ出張した際、駅から徒歩数分の場所に立地する現地のホテルへ宿泊しました。そのホテルは元々百貨店でしたが、業績が厳しく、ホテルに転業したとのことでした。実際にそのホテルにチェックインすると館内には百貨店の雰囲気が色濃く残っています。(写真は一部加工しています)

 階段の告知物を見ると、低層階では婦人服を販売し、上層階はホテルとして営業しているとのことでしたが、私が宿泊した時は、低層階に婦人服売場はなく、がらんどうの状態でした。

 かつては地域を代表する百貨店として繁盛していたものの、業績が厳しく、高層階をホテルへ変更し、売れ筋の衣料品を低層階で販売していたのでしょう。しかし、その販売も厳しくなり、低層階の売場を撤去したものの、告知物の変更に手が回っていない。

 そんな推測をしながら感じるものは、このホテルの今後に対するワクワク感などのポジティブなものではなく、寂れた感やチグハグ感などのネガティブなものであり、今後の生き残りをかけた事業展開に不安を感じてしまいました。

本業を疎かにしていては儲からない

 この企業の強みの1つとして、小売業のノウハウが豊富である点が挙げられるはずです。反面、ホテル運営のノウハウは持っていないという弱みがあるとしたら、その弱みを全面に出した事業展開をすることに何らかの意図がなければなりません。

 その意図が、単に「遊んでいるフロアを活用して収益を上げる」というものでは、短絡的と言われても致し方ないでしょう。「本業を強化させるために遊んでいるフロアを活用して収益を上げる」という考え方が必要です。

 これがないと、ホテルがダメになったらまた違う事業、それがダメになったらまた違う事業、という形で行き当たりばったりで儲かりそうな事業を手がけるようになっていきます。行き当たりばったりですから、儲かる可能性は高くなく、ますます苦境に陥っていくでしょう。

本業を強化するための経営戦略

 ある別の地方百貨店では、業績が厳しくなり、売場を縮小し、低層階でのみ衣料品や雑貨の販売を行うこととしています。
 主要顧客層は中高年であり、高齢層の顧客対応力を強化するために福祉関連の資格を持っている従業者もいます。現在、建物の高層階はほとんど使用されておらず、福祉関連の資格もあるので、サービス付き高齢者住宅として上層階を活用したいというご意向がありました。

 これも前述の上層階をホテルとして営業している企業と同じ「遊んでいるフロアを活用して収益を上げるため」という発想です。
 このように店舗スペースを有効活用できていない事業者の考え方には共通点があります。溺れる者は藁をもつかむと言いますが、儲かりそうな事業と思って飛びついたのが藁であっては、溺れてしまいます。

 「本業を強化させるために遊んでいるフロアを活用して収益を上げるため」という発想でいくならば、サービス付き高齢者住宅という「モノ」を提供するのではなく、デイサービスという介護度を高めないために通う「コト」を提供するべきでしょう。

 通うということは外出する、ということです。外出するには衣料品が必要ですから、低層階の販売が促進される可能性があります。

 店舗スペースを有効活用する目的は、本業を強化させるためです。単に収益を上げるために活用するのではないことをしっかり押さえ、冷静になって仕組んでいく必要があると言えるでしょう。

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