経営を改善するには、顧客に自店の「強み」を訴求する必要があります。「強み」は競合と比べて有利かつ、顧客に価値を与えることのできる内部環境のことです。
よって、競合の動向がどうなっているのか、自店の顧客は誰なのかを把握しなければなりません。これを把握せずに見誤った「強み」を訴求しても、顧客は店舗に価値を見出せず、経営が改善できないことになります。
今回のコラムでは、昔ながらの回らない寿司店の事例を通じて、競合の正しい見極めと標的顧客の設定に基づく「強み」の見出し方について見ていきます。
本当の競合はどこなのか
昔ながらの、ある回らない寿司店の店頭には以下の告知物があります。
この寿司店でランチを摂る機会がありました。920円の握り寿司をつまみながら、カウンター内の大将から話を聞くことができました。昔は結構繁盛していたのだそうですが、近隣にスーパーマーケットが進出し、寿司の販売をするようになって客数が随分と減ってしまったとのことでした。
確かにその寿司店から歩いて5分ほどのところにスーパーマーケットがあり、寿司を販売しています。閉店間際には廃棄を避けるために、値段を下げて売ることもしています。では、この大将の寿司店における競合は、そのスーパーマーケットなのでしょうか。
自店の顧客は誰なのか
寿司がその店舗でしか食べられない時代は、寿司を食べたい顧客は、その店舗に行かざるを得ませんでした。しかし、スーパーマーケットが出店し、寿司を販売するようになると、そちらの寿司に魅力を感じる顧客が流出しました。
そこで、スーパーへ流出した顧客を取り戻そうとするのは得策とは言えません。なぜならスーパーの寿司に魅力を感じる顧客は、自店が取り込む層ではないからです。
自店が取り込む層、つまり標的顧客は、寿司をカウンターや小上がりで食べる顧客や、店舗スタッフとの会話を楽しむような顧客です。そのような顧客が行く自店以外の店舗が競合店であり、スーパーを競合と見なすことは誤った戦略が策定される可能性が高まります。
自店が訴求するべき強みとは
この寿司店から徒歩10分圏内に、回らない寿司店が1店、ランチ営業を行う海鮮居酒屋が数店あります。そのうちの1店は、ランチ握りとして10貫1,000円をウリにしています。
これに対して、大将の店のランチは7貫プラス巻物2個で920円と価格的に優位性はありそうです。さらに握りのネタの厚さでは完全に勝っています。
また、920円に8%の消費税がかかりますので、税込みで994円となりますが、990円で提供しており、食事後に退店する際は、大将か女将さんが引き戸を開けてお見送りをしてくれます。
これを踏まえると、前述のPOPは以下のように書き換えることで訴求力が向上するでしょう。
「ランチ920円(税込み990円。厚いネタの7貫プラス巻物2個)、税込み価格で1円単位の端数はいただきません。お昼時の会話を楽しみたい方、そうでない方も是非ご来店ください」
このように、自店の競合がどこなのか、自店の顧客は誰なのかという点をしっかり認識することにより、自ずと顧客へ訴求する内容が決まってきます。回らない寿司店の経営を改善するための「強み」の見出し方として、競合・顧客を正確に見極めることが重要と言えるでしょう。
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