同社はある特定分野に特化したコンサルティング会社ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、顧客との対面による打ち合わせ・社内研修の他、現場での実地指導が困難になり、業績が厳しくなってしまいました。
そこで、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>を用いて、現状を打破しようと考え、計画書を作成し申請しましたが、結果は不採択となってしまいました。そこで、同社が作成した計画書を事例として取り上げ、採択される可能性を向上させる書き方を検討していきたいと思います。
下図は当補助金申請時に提出する「【様式1】経営計画および補助事業計画」の構成ですが、今回のコラムでは、下図の赤枠部分<経営計画>「1.自社の事業概要」の書き方を見ていきます。なお、当コラムの内容は2022年1月25日時点の情報に基づいています。
1.持続化補助金<低感染リスク型>の書き方を不採択事例から学ぶ【自社の事業概要編】
持続化補助金<低感染リスク型>の書き方を不採択事例から学ぶ【自社の事業概要編】(1)見出しを設ける
新聞は見出しがないと誰も読む気が起こらないと言いますが、その理由はどこに何が書いているのか全体像が把握しにくいからだと考えられます。同社は「自社の事業概要」欄に見出しを設けることなく、文章を詰め込んでいました。
このような形で記載されてしまうと、読み手の理解は進みにくく、結果として高評価を得る可能性は高くないと考えられます。そこで、見出しを設ける必要があるのですが、闇雲に見出しを設ければ良いというものではないでしょう。
「【様式1】経営計画および補助事業計画」のフォーマットは当補助金のホームページからダウンロードできますが、当フォーマット<経営計画>「1.自社の事業概要」には以下の但し書きがあります。
この但し書きに示された項目は、大きく現時点のことと今後のことに分けられ、さらに現時点のことは内部環境と外部環境に切り分けることができます。これらを意識して以下のように見出しを設けると内容もまとまりやすく、そして読みやすくなるでしょう。
現時点のこと
●内部環境:「自社の概要」「経営状況」「課題」「特徴」「自らが製造・販売・提供している商品・サービスの内容」
●外部環境:「市場動向」
今後のこと
●「自社の経営方針」「目標」
これら項目と同社が記載してこられた内容を照合すると、今後のことに関する記載が抜けていたことが、文章だけの記述という読みにくさと相まって、採択を遠ざけてしまった要因のひとつと考えられます。
持続化補助金<低感染リスク型>の書き方を不採択事例から学ぶ【自社の事業概要編】(2)ビジュアルに訴求する
文章だけの記載では読みにくいので、見出しを設けるべきと述べましたが、さらに写真を盛り込むことも効果的と言えるでしょう。同社の場合は、商品ではなくコンサルティングというサービスを提供しているので、商品の写真は盛り込めませんが、経営者やオフィスの写真を盛り込んで、ビジュアルに訴求することにより、読み手はリアリティを持つことが期待できます。
特に経営者の写真を盛り込むことは「顔が見える計画書」となり、情報開示に積極的な姿勢を感じさせることから、信頼感の醸成にも繋がると判断しています。
なお、2016年にESSPRIDE社が、従業員数300名未満の企業で働く経営者200名と一般社員200名を対象に行った調査によると、経営者の62.0%、一般社員の79.0%がホームページやパンフレットに経営者の顔写真を掲載しているほうが信頼できると回答しています。
持続化補助金<低感染リスク型>の書き方を不採択事例から学ぶ【自社の事業概要編】(3)数値を用いて説明する
同社は、自社の利益や市場模について記載しておりましたが、これらに関する内容に数値が一切盛り込まれておりませんでした。例えば、現在自社の利益が100万円であることと5,000万円であることでは大きさの違いが具体的に分かります。市場規模にしても10%増であることと100%増であることでは、伸び率の違いが具体的に分かります。
このように数値で表すことができる内容は、できるだけ数値を用いて説明することで説得力が向上するでしょう。なお、前述した当補助金のホームページには、計画書の記載例も公開されており、今回見ている「自社の事業概要」については、以下となっています。
この記載例からも分かるように、数値での説明も意識することは、採択にポジティブな影響を与えるのではないでしょうか。
今回のコラムでは<経営計画>「1.自社の事業概要」の書き方として(1)見出しを設ける、(2)ビジュアルに訴求する、(3)数値を用いて説明する、を挙げました。次回のコラムでは「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」を見ていきます。
2.小規模事業者持続化補助金の計画書作成をサポートします。
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