エンジンルームを点検する意義
ガソリンスタンドでは、顧客のエンジンルームを点検したがります。エンジンルームを点検すると、何らかの不備が見つかり、そのセールスができるからです。完全に整備されている何の不備もないエンジンルームなどそうそうないものです。
ガソリンスタンドでは、エンジンルームを点検すると、特に質の劣化、量の不足を理由にエンジンオイルを販売したがります。ガソリンや軽油などの燃料油メーカーは、エンジンオイルなどの石油製品も製造していますので、取引先のガソリンスタンドには、燃料油の販売以外にエンジンオイルの販売も推奨してくるケースがあるからです。
これに対して顧客としては、車両の安全な運行をするためというよりも、ガソリンスタンドの利益のためにエンジンルームを点検するという姿勢が見え隠れするので、エンジンルームの点検に応じる方は少数派です。整備はディーラーや整備工場に依頼すれば良い話なのです。
自店の優位性を訴求する
前述のように、顧客は自身の車の整備はディーラーや整備工場に依頼する方が多いわけですが、それはなぜなのでしょう。車両に対する知識と整備の技術がガソリンスタンドより上回っているからではないでしょうか。
そこで、ガソリンスタンドを営む自店が、ディーラーや整備工場より知識も技術も上回っているのであれば、それを告知する必要があります。例えば整備士の資格を持つスタッフや、整備の業歴が長いスタッフが駐在していたりする場合です。そして、そうでない場合は、別の優位性を訴求しなければなりません。
ガソリンスタンドの優位性は、顧客の来店頻度が高い、という点です。顧客は、整備が必要な時にしかディーラーや整備工場に来店しませんが、ガソリンスタンドには給油が必要ならその都度来店し、その頻度は整備が必要な場合に比べると非常に多いはずです。
このことは、ガソリンスタンドは、エンジンオイル交換などの車両整備をした際に、アフターフォローがしやすい環境であることを意味します。ディーラーや整備工場よりも知識・技術面で上回っていない場合は、「当店でエンジンオイル交換をしたお客様は、給油の都度、エンジンオイルを点検いたします」などといった、ディーラーや整備工場に対する優位性を訴求しなければなりません。
なぜエンジンルームを点検するのか
前述の通り、ガソリンスタンドが、なぜエンジンルームの点検をしたがるのかというと、エンジンオイルを始めとした油外商品を販売したいからのはずです。であるならば、点検をしないでも油外商品が販売できれば良いわけです。
「売れる仕組みを構築する」という意味で用いられるマーケティングには、プル戦略とプッシュ戦略があります。
プル戦略は、顧客を来店させる戦略です。新聞折込みチラシやネット広告、フリーペーパーなどが主流とされます。
これに対してプッシュ戦略は、来店いただいた顧客の購買確率や購買数量を向上させていく戦略です。ハンドアウト用のチラシ、POP、ダイレクトメールや、スタッフによるセールスなどが主流となるでしょう。
ディーラーは、販売促進活動としてチラシの折込などのプル戦略、セールスマンによるプッシュ戦略をとる印象がありますが、ガソリンスタンドは、プッシュ戦略、それもスタッフによるセールスに偏っている印象があります。
エンジンオイルを売りたいなら、エンジンオイル交換を当店で実施する優位性をプル戦略で訴求すれば、エンジンルームの点検などという、まどろっこしい手法を使わずとも販売は可能になるはずです。
ボンネットを開けるために
色々なガソリンスタンドが色々な手法でエンジンルームを点検しようとボンネットを開ける手段を講じてきました。
給油中に「車内のフロアマットを無料で清掃します」と言って、顧客を車から降ろし、スタッフはフロアマットを車内から出すために運転席の脇にしゃがんだ際にボンネットを開けるレバーを引くケース。
給油中に「ワイパーの水を無料で補充しているので、ボンネットを開けてください」と言って、ボンネットを開けていただくケース。
給油中に「エンジンルームの点検をいたします」と言いながらボンネットの前に移動して、顧客がボンネットを開けざるを得ない状況を作って、点検をするケース。
このような手段は、顧客から商売に対する姿勢を疑われ、逆に売れなくなるでしょう。ガソリンスタンドが点検をしないでエンジンオイルを販売するには、当店のエンジンオイル交換について、ディーラーや整備工場に対する差別的優位性を訴求することが挙げられるでしょう。
点検に関する参考コラム
■エンジンルームの点検がガソリンスタンドの利益を低下させる理由
■エンジンルームの点検を依頼したくなるガソリンスタンドとは
■儲かるガソリンスタンドが今日のパンよりも明日の糧を求める理由
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