業績向上の背景にあったもの
複数店舗を展開している、あるガソリンスタンド運営会社で人事異動が発令され、ある店長が異動となりました。この店長が赴任して間もなく、その店舗のタイヤ販売が大幅に伸びました。本社としては、この人事異動が成功したと判断し、ホクホクだったわけですが、ほどなくして、その店舗の一般社員から内部通報がありました。
その内容は、新たに赴任したその店長がタイヤ点検の際に、顧客の目を盗み、タイヤの側面(サイドウォール部)に穴を開けて、タイヤの交換を勧めているというものでした。
タイヤの接地部分は、車両の重量や地面との摩擦で大きな負荷がかかるため、内部に針金を放射状に張り巡らせて強度を保っていますが、地面との摩擦から発生した熱を発散しやすくするために、サイドウォール部には針金などは入れず、結果として接地面と比較して強度が低くなっています。
そのため、簡単に穴を開けることが可能です。強度の低い部分に穴を開けると、修理してもタイヤ全体の強度が下がるため、新品に交換する必要があります。
この店長は、タイヤ点検の際に隠し持った鋭利な器具でサイドウォール部分に穴を開け、さも元々パンクをしていたように顧客に接して新品への交換を勧めていた、という内部通報でした。
不正への対処
このような由々しき事態を本社が把握できたものの、証拠はありません。店舗の監視カメラに映った録画画像では、店長がタイヤ点検をしている様子は把握できても、サイドウォール部に穴を開けている様子までは把握できません。
このような場合の対処ですが、まず、事実を確認するために、1日に何本売れたかタイヤの販売表を作成させます。そして、1台1台その交換理由を記載させます。交換理由が「パンク修理不可のため」であれば、どこに何が刺さってパンクしていたのかを記載させます。
その際、タイヤの販売をしたのが店長であれば店長以外のスタッフに、また、店長以外のスタッフが販売したのであればそのスタッフ以外のスタッフに、交換理由が間違いないことを意味するサインをさせ、毎月本社に提出させます。
これだけで、サイドウォール部に穴を開けるという不正の抑止効果がありますが、それを強化させるために、店長やサインをしたスタッフに、このタイヤ販売表をもとに、毎月どのような取組みをしてタイヤを販売しているのかヒアリングをします。表向きの理由は、タイヤ販売のノウハウを全社で共有したいから、というもので良いでしょう。
そもそも不正はなぜ起こったのか
この不正の背景には、当該店長の性格もあったと思いますが、過剰な油外商品の販売ノルマがあり、売れればそれでよしとする社風もありました。今回のケースでは、内部通報をきっかけに不正を暴きましたが、もし、顧客から苦情として通報があったとしたら、企業の存続にも関わります。目標を設定することは重要ですが、プレッシャーが大きすぎると不正が起きる可能性が高まります。
タイヤなど油外商品の販売が激増したガソリンスタンドの経営者は、現場に目を向け、なぜ売れたのかをしっかり把握する必要があります。これにより、不正の有無の他、全社で共有できる販売ノウハウを見出すことが可能となるのです。
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