経験が豊富な店舗スタッフの活用がうまくいかない重要な理由

戦略の考え方

高校時代に経験した日雇いアルバイト

 先日、秋田県の北秋田市へ仕事で伺ってきました。この北秋田市は、2005年に北秋田郡の鷹巣町・合川町・森吉町・阿仁町が新設合併して発足した自治体ですが、私は青森県青森市で高校生活を過ごしていた頃、この旧鷹巣町にアルバイトをしに来たことがあります。

 そのアルバイト先は青森市に所在する漬け物販売の会社だったのですが、仕事内容は、朝にその日働くアルバイトや正社員が集まり、1台の車に乗ってプラスチックの樽に入った漬け物を売りに歩くというものでした。

 忘れもしないアルバイト初日に漬け物を売りに行ったのが、青森市から車で1時間強の場所にある前述の旧鷹巣町でした。住宅や店舗を1軒1件訪問し、1つ4,000円の漬け物を売り、販売に成功すれば500円が支給されました。

 その日、私は8個の漬け物を売り、4,000円を手にしました。当時の私にとっては大金で、嬉しかったことを覚えていますが、もっと嬉しかったのは正社員の方が「お前みたいに売る奴はなかなかいない。またバイトしに来いよ」と声を掛けてくれたことでした。
 その正社員いわく、新人の私は、どんな住居・どんな店舗でもどんどん訪問するが、経験のある自分含め他のスタッフは、買ってくれそうな住居・店舗を見極めようとして、訪問を躊躇してしまうことがある、とのことでした。

経験が邪魔をする

 ガソリンスタンドで油外商品を販売するには、店舗スタッフから顧客への声かけが必要です。そして、経験が豊富なスタッフほど、声をかける顧客を選ぶ傾向が強くなってきます。これは、むやみやたらと声をかけて、労多くして功少なし、という状態に陥りたくないという意識の表れだと思います。

 ですが、前述の私のように、入社して顧客への声かけを覚えたばかりの新人スタッフの方が、相手を選ばず声をかけ、大きな実績を挙げることは珍しいことではありません。

 経験が邪魔をする、とはこのことで、長年の経験から顧客を選別してしまい、「この人は売れないだろう」と勝手に妄想してしまうのです。私はこういった方々を「妄想族」と呼んでいます。

「妄想族」は排除するべきなのか

 かつての私は店長として、この「妄想族」を排除しようと、ベテランスタッフに全顧客への声かけを指示したものです。また、その指示に従わないベテランスタッフには厳しい姿勢で接し、結果として多くのベテランスタッフの退職に繋がっていきました。

 ただし、ベテランスタッフは、タイヤ交換やオイル交換など各種作業ができますし、新人のフォローもしてくれるわけで、それはそれで活用しない手はありません。

 よって、どちらかというと新人スタッフには声かけに重きを置いた仕事を、ベテランスタッフには作業やフォローに重きを置いた仕事をしていただくようにしたところ、大きな成果に繋がりました。

バランスを意識する

 ボストンコンサルティンググループが開発した、今後の戦略決定を目的とした考え方の枠組みとして「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」というものがあります。
 これは、複数の事業を展開する企業が今後、それらの事業に経営資源をどれだけ投入するかを判断する際に使用することが可能です。縦軸に市場成長率、横軸に相対的市場占有率をとった表を作成し、各事業を以下に示した4つの象限に分類します。

 成長率が高く、占有率も高い「花形」に分類された事業は、成長率が高い市場にいますので、資金流入は多いのですが、反面、競争が激しく、その中で高い市場占有率を維持するべく、多額の広告宣伝費などの資金流出も多い事業です。一見、派手に見えますが、資金の稼ぎ頭ではありません。

 成長率が低く、占有率は高い「金のなる木」に分類された事業は、成長率が低い市場にいますので、競争は穏やかです。その中で市場占有率は高いため、資金の流出の割には、資金の流入が多く、資金の稼ぎ頭となります。

 成長率が高く、占有率は低い「問題児」は、今後、投資をして「花形」に育てるべきか、撤退するべきか、見極めが必要です。

 成長率が低く、占有率も低い「負け犬」は、原則として撤退を検討します。

 ここでのポイントは、「花形」ばかりではなく、「花形」から卒業して収益性の高い事業である「金のなる木」、今後の「花形」になる可能性を秘めた「問題児」、それぞれをバランス良く保有することです。
 このバランスを意識しないと、資金流入の大きい「花形」ばかりに目を奪われ、手元に資金が残らない、という事態も招きかねません。
 
 人的資源の構成も同様で、ベテランスタッフと新人をバランスよく確保しておくことが重要と考えます。経験が豊富な店舗スタッフの活用がうまくいかない重要な理由は、成果を出すことを急ぐあまり、その経験を否定してしまうことなのかもしれません。

参考コラム

 ■大きな油外収益を継続して確保できるガソリンスタンドの共通点
 ■品揃え展開の上手な店舗は4種類の商品バランスを考える
 ■業務を徹底させるために

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