店舗スタッフを蹴った顧客
そのガソリンスタンドの運営会社は複数店舗を経営していましたが、傘下の一店舗でトラブルがありました。
ある顧客が、自分の車両のタイヤについて空気圧点検を店舗スタッフへ依頼しました。その顧客が言うには、空気圧点検をするたびに4本のタイヤのうち特定の1本だけがいつも空気圧が減っており、パンクではないか、とのことでした。
その店舗スタッフが空気圧を点検してみると、やはりその1本だけ空気圧が少なく、そのタイヤ自体を丁寧に点検したところ、タイヤに穴が開いており、そこから空気が漏れていることが分かりました。
ただし、タイヤの接地面ではなく側面に近い部分に穴が開いており、その位置はパンク修理が困難でしたので、その旨お伝えしたところ、顧客はなぜか激怒し、そのスタッフの尻を蹴り上げました。
蹴られたスタッフは、決して乱暴な言葉遣いをしたわけではありません。通常の対応をしたつもりでした。そこで、事務室にいた店長にその旨を報告し、警察を呼ぶことにしました。
この顧客には、タイヤのどこに穴が開いていようとパンク修理はできるはず、という思い込みがあり、タイヤを売りつける口実だろうと勘違いしていたようです。駆け付けた警察が店と顧客の間に入り、その場は一応収まりました。
さらなるクレーム
このガソリンスタンド運営会社には、100%出資の親会社がありました。そして、親会社の事業のひとつとして、お客様からの相談や苦情を受け付ける「お客様センター」運営事業がありました。
上記のトラブルがあって数日後に、この「お客様センター」に上記スタッフを名指しで非難する投書が届きました。「お客様センター」はその投書を子会社である本社へ回し、それを受けた本社スタッフが同店の店長に確認したところ、投書の内容から、先日、警察沙汰になった顧客からのもので間違いないであろうという判断ができました。よって、とるに足らない、対応するべき案件ではないはずでした。
ところが、その話を聞いた本社の対応は、先方の顧客への謝罪と店長に対する叱責でした。どう考えても暴力を振るった顧客側に非があるのに、店長としては納得がいきません。
そのようなことがあってしばらくした後に、その店長は、あるきっかけで、親会社の「お客様センター」に苦情があった場合、その内容にかかわらず、子会社の経営者は厳しく叱責されることを知ることとなります。
自分が厳しく叱責された理由を把握したこの店長は、本社や親会社に大きな不信感を抱くこととなりました。
従業員満足の重要性
「モノ」を提供するわけではないサービス業のマーケティングは、それ以外の業種のマーケティングとは、様相が異なります。ガソリンスタンドは、ガソリンという「モノ」を提供していますが、その商品は目に見えるものではないため、サービス業と捉えることができます。よって、ガソリンスタンドにおいては、サービス業としてのマーケティングが重要と言えるでしょう。
サービスマーケティングのポイントは、顧客満足は従業員との関係性で決まること、高い顧客満足を提供する従業員は高い従業員満足を得ていること、です。そして、従業員満足は、能力開発、モチベーション、標準化から構成されます。
上述のガソリンスタンド運営会社は、現場を良くするためではなく、二度と親会社から叱責されたくないという自己本位の姿勢から現場の店長を叱責しました。これを知った店長のモチベーションが著しく低下したことは想像に難くありません。
店舗で暴力を振るい警察沙汰になった顧客からのクレーム対応として、本社がなすべきことは、現場からしっかりとヒアリングを行い、毅然とした対応を行うことであると言えるでしょう。
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