「ガソリンしか買わない顧客に、徹底して声掛けをすれば油外商品が売れるでしょうか」という質問を受ける機会がありました。油外商品とは、ガソリンや軽油といった燃料油以外の商品、つまり洗車やタイヤ、車検などを指します。
販売のためのアプローチは、質と量に切り分けて考える必要があります。今回のコラムでは、前述の質問を踏まえ、油外商品が売れるアプローチを質の面から2つ、量の面から1つ、合計3つのポイントを見ていきます。
売れるアプローチのポイント1:競合との差別化を訴求する(質的側面)
油外商品の販売をするにあたり、競合として意識するべきは、ガソリンスタンドの他にカーディーラー、整備工場、カー用品量販店などのカーメンテナンス専門店ですから、これら事業者との差別的優位性を訴求する必要があります。
カーメンテナンス専門店には、整備を理由とした来店が多いはずです。これに対してガソリンスタンドは、給油を理由とした来店が多いはずです。つまり、来店頻度はガソリンスタンドの方が多いわけで、それだけアフターフォローのチャンスが多いことを意味します。
よって、5年程度の有効期間を切って、空気圧無料点検&タイヤのナット締まり具合点検カードを配布すると、給油の都度、空気圧点検を申し出ていただける可能性が高まります。タイヤの寿命は5年と言われていますので、仮に新品のタイヤを装着した顧客であっても、5年後にタイヤの交換に繋がる可能性が高まります。
空気圧点検やナットの増し締めなど、このような無料サービスを依頼することに気兼ねをする顧客も存在するものです。カードを渡すことにより、このような気兼ねを薄める効果があります。
売れるアプローチのポイント2:顧客との関係性を構築する(質的側面)
自宅にセールスマンが飛び込み営業に来たとします。この場合、まず断ろうとするのが通常の姿です。なぜなら、関係性が構築されていないからです。
ガソリンスタンドにおける油外商品の販売も同様のことが言えます。給油のために初めて来店した顧客に、「洗車いかがですか」「点検いかがですか」と声掛けをしても、関係性が構築されていない状況で、油外商品を購買する可能性は高くありません。
よって、無料でタイヤの空気圧点検を申し出たり、車内清掃用のタオルを貸したりするアプローチや、次回利用できるクーポン券を配布することで再来店を促し、関係性を育み、油外商品を買ってくれる顧客に育てていくことが重要です。
この際に役立つのが、車両ナンバーと接客情報を紐付けたエクセルによる管理です。詳しくはこちらのコラムをご覧下さい。
ガソリンスタンドで顧客管理をエクセルで行う方法
売れるアプローチのポイント3:従業員が離職しないようにする(量的側面)
従業員がいないとアプローチはできませんので人材の充足をしなければなりません。この場合、現在、当店で働いている「既存の人材」と新たに入社する「新規の人材」に切り分けて検討する必要があります。そして、優先して検討するべきは「既存の人材」の離職を食い止めることです。
大量に出血している怪我人に輸血をする場合、まず行うのは止血であり、その上で輸血をしないと、輸血した血液が無駄になります。「既存の人材」の離職を食い止めることは人材の止血をすることと同義です。
その止血策は、従業員満足の向上です。これを考える際に重要なことは、金銭や労働条件よりも、能力開発、モチベーション、標準化に目を向けることです。詳しくはこちらのコラムをご覧下さい。
ガソリンスタンドが従業員満足の向上に取り組むべき理由とは
私は、ガソリンスタンドの店長として、1年間で70名のスタッフに辞められた経験があります。ですが、その後、従業員満足の向上に取り組んだ結果、就職活動を控えた大学生のアルバイトスタッフが当店に就職したがるようになりました。従業員満足の充足は人材の固定化に大きく寄与します。
今回のコラムでは、ガソリンスタンドで油外商品が売れる3つのアプローチとして、1.競合との差別化を訴求する、2.顧客との関係性を構築する、3.従業員が離職しないようにする、を挙げました。
油外商品の販売において、個人のスキルや意欲だけに頼ることなく、安定した業績を出すために、今回取り上げた3つの理由を意識し、油外商品の販売がしやすい仕組みを整えていただけたらと思っています。
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