買わない顧客への油外販売が抱える3つのリスク

客単価向上

 あるガソリンスタンドで一般社員として働くA氏が発した以下の趣旨の不満に触れる機会がありました。

 この店舗は、最近、洗車やタイヤなどガソリン以外の商品、いわゆる油外商品の販売で、個人実績グラフを貼り出すようにしました。店長は「必要なのは、うちの店で油外商品を買ってくれないお客さんへの販売。いつも買ってくれるお客さんに声を掛けて売れたとしても、それは販売ではなく確認作業だから真の実績とは言えない。」と頻繁に言っています。

 ですが、店長以外のスタッフが常連客に油外商品を販売すると、店長は自分の実績としてグラフに記入しており、A氏は納得がいきません。

 ここで気になるのは、店長がスタッフの実績を横取りすることよりも、買って下さらない顧客に対する販売を重視している点です。これが行き過ぎると以下に示す3つのリスクが高まります。

新規顧客への油外販売が抱えるリスク1:顧客の離脱

 いつも油外商品を買って下さる顧客は、意識しているしていないにかかわらず、買う理由があるはずです。反面、いつも油外商品を買って下さらない顧客も、意識しているしていないにかかわらず、買わない理由があるはずです。

 それを明確に掴まずして、ひたすら売り込もうと声を掛け続けると嫌がられるのは当然です。嫌がられても来店して下さればまだ救いはありますが、他店に鞍替えされたら、ガソリンすら売れなくなってしまいます。

 買って下さらない理由が、顧客の誤解に基づくものならば、誤解を解けば売れます。なので、売り込むよりも買わない理由を探るためのコミュニケーションが必要となります。 買って下さらない理由が至極正当なものであるならば、売込みは止めた方が顧客もスタッフもハッピーではないでしょうか。

 この際に活用したい安価な情報共有のツールとしてエクセルが挙げられます。以下のコラムを参考にしてください。
 ガソリンスタンドで顧客管理をエクセルで行う方法

新規顧客への油外販売が抱えるリスク2:コストの上昇

 ここでいう「コスト」は、金銭的なものだけでなく、スタッフの負荷も含みます。「5:1の法則」というものがありますが、これは、新規顧客からの受注1件に費やすコストは、既存顧客からの受注1件に費やすコストの5倍である」というものです。

 いつも油外商品を買って下さる顧客は、声を掛けるとすんなりと買ってくれます。これに対して、買って下さらない顧客に買っていただくには、関係性の構築、丁寧な説明が必要であり、その分、スタッフの負荷が高まる、ということです。これが行き過ぎると退職となり、人手不足に拍車がかかります。

 よって、油外商品を買って下さる既存顧客に、より高額なものを買っていただくアップセルや、関連する油外商品を買っていただくクロスセルを展開していった方が、低コストで業績を向上させる可能性が高まります。

 ただし、そのような優良顧客が離反する可能性もあるわけで、そのために買って下さらない顧客を油外商品の見込み客へ、そして買って下さる顧客へと育てる必要があり、次に述べる対策を取る必要があります。

新規顧客への油外販売が抱えるリスク3:スタッフの離職

 人は、自身の活動の成果が出ないと心が折れる場合が多いのですが、なかなか買って下さらない顧客に売り込みをかけ続け、成果が出ないと心が折れてしまいやすくなります。

 今日の売上は今日作るものという認識が、顧客への押し売り感を強めます。今日の売上は数か月かけて作ってきた顧客との関係性や信頼の結果である、という認識が顧客・スタッフ双方にとって無理のない販売になり得ます。

 私の経験上、スタッフの本当の退職理由№1は「無理な油外商品の販売を強要されて心が折れたから」です。よって、なかなか買って下さらない顧客には、普段洗車はどこでやっているのか、整備などのメンテナンスはどうしているのか、といった会話ができるような関係性を構築していく必要があり、そこから、突破口が見つかる可能性が高まります。

 今回のコラムでは、新規顧客への油外販売が抱えるリスクとして、1.顧客の離脱、2.コストの上昇、3.スタッフの離職、を挙げました。今日の糧ではなく明日の糧に目を向けて、無理のない油外商品の販売をするガソリンスタンドが増えることを祈っています。

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