アクセサリーを中心とした品揃えの雑貨店を開業したAさん。店舗は賃貸物件で家賃は月額10万円です。オープンしてみると1日当たりの来店数は、平日で10人、週末で50人程度でした。
売れていくのは500円~2,000円のものが中心ですが、来店者の全てが買っていくわけではありません。Aさんが売りたいのは1万円の価格帯のものですが、これが、涙が出るくらい売れてくれません。結果として月商は家賃分にも届かない状況です。
創業前の見込みとはちょっとどころか、かなり違うため、不安になったAさんは、これからチラシを作ってポスティングを行い、雑誌広告も打つ予定です。そして、それ以外に何か打ち手はあるだろうか、というご相談に触れる機会がありました。
開業当初からバンバン売れることはそうそう無いわけですが、それでも、せめて家賃と経費程度は稼ぎたいという気持ちは当然抱くでしょう。今回のコラムでは、そのような雑貨店が考えるべきことを見ていきます。
1.売上アップのために考えるべきこと
売上アップのために考えるべきこと(1)誰に売るのか
「誰に売るのか」と聞かれて「お店に来た人」という答えをいただいたことがありますが、この質問は、店舗に来て欲しい人は誰なのか、同店の意思に基づく戦略を問うています。
ここで「誰でもいいから来て欲しい」ということだと特徴のない店舗になってしまい、誰も来なくなってしまうか、来ても何も買わないことになってしまいます。何といっても特徴がありませんから。
例えば、以下のような人に販売することを想定します。
- 20代で仕事を持つ独身女性。
- 結婚後も仕事を続けたいと考えており、キャリアアップの願望がある。
- 現在は実家暮らしで、都内へ1時間の電車通勤をしている。
- 週末はテニスをするのが趣味。
このような顧客にアクセサリーを始めとした雑貨を提供するとしたら、品揃えにせよ、店構えにせよ、アピールポイントにせよ、ターゲットとして定めた顧客に沿ったものになるはずです。
これに対して、誰でもいいので来店してくれた人に買ってもらおうとする店舗では、そもそも特徴が表れず、結果として低価格を訴求しがちとなります。そのような取組みの多くは、ネット通販や大手資本の前にもろくも崩れ去ってしまうでしょう。
前述の経営者は、チラシのポスティングと雑誌広告を打つとのことですが、それら広告媒体を使ったとしてもターゲットを定め、その層にアピールする特徴がないことには、効果は限定的となってしまいます。
売上アップのために考えるべきこと(2)何を売るのか
「何を売るのか」と聞かれて「アクセサリーを始めとした雑貨」という答えが浮かんだら、顧客は、そのような「モノ」を通じて、どのような「コト」を入手したいのかを検討する必要があります。かつて、店頭に「モノ」さえ置けば売れる時代がありました。ですが、消費者ニーズが高度化した今、「モノ」を通じた「コト」を提供する必要があります。
例えば、前述のターゲットに当てはめるとしたら、アクセサリーを通じて、彼氏候補にアピールすることや、30代になっても美しさを保つこと、アクセサリーをしたままスポーツができること、満員電車の車内でもアクセサリーが邪魔にならないこと、などが考えられます。そして、これらの「コト」を提供できるアクセサリーを取り揃え、広告媒体で訴求することが効果を上げる可能性を高めるでしょう。
売上アップのために考えるべきこと(3)どのように売るのか
誰に売るのかという「ターゲット顧客」が決まり、何を提供するのかという「応えるべき顧客ニーズ」が決まったら、次に考えるべきことは、どのように売るのか、つまり他店との差別的優位性になります。
例えば、競合がセルフサービス主体の販売をしているのであれば、マンツーマンでしっかりと顧客の相談に乗りながら売る、また、競合が海外買い付けなどで仕入れたレアな商品力で販売しているのであれば、店主のキャリアを全面に出して人間力で販売する、などです。
実は、自店の店主のキャリアが、競合の店主のそれと全く同じということは、まずありませんので、差別的優位性の源泉となりやすいことに留意しておきたいところです。そして、この差別的優位性を広告媒体で訴求することとなります。
雑貨店が売上アップのために考えるべき3つのこととして、(1)誰に、(2)何を、(3)どのように売るのかという点を見てきました。この3つは事業領域もしくはドメインと呼ばれ、事業の根幹を成すものです。自店の事業領域、ドメインを定め、それに沿った店舗にすることにより、広告の効果も高まるでしょう。
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