私は、ガソリンスタンドの運営会社を長年渡り歩いてきましたが、今回のコラムでは、厳しい市場環境の中、業績悪化を食い止める反面教師とするべく、私が21年間、7社17店舗の中で経験した残念な、つまり生き残れなかったガソリンスタンドを見ていきたいと思います。
残念なガソリンスタンド1:部下を叱ることができない管理職
部下を叱ることができない管理職がいると残念なガソリンスタンドになります。叱るのではなく怒る管理職が多い印象を持っています。「怒る」は相手に対するリスペクトがなく、上司が部下の言動に傷付いている場合に発生します。「叱る」は育成の手段であるため、管理職は口調がきつくても冷静に諭し、フォローがあります。
叱ることができない管理職が多い背景として、業界全体に人材育成の観点が薄いため、育成された経験がないまま管理職になってしまった人が多いことが挙げられるでしょう。メーカーが現場で働く人のために様々な教育制度を準備していますが、ガソリンスタンド運営会社の経営者に人材育成の観点がないまま、そのような制度に社員を送り込んでも状況は変わらないはずです。
残念なガソリンスタンド2:社会的地位が低いと思っている経営者
ガソリンスタンド業界は、社会的地位に過敏に反応する方が多い印象があります。これを気にするのは、その上司がガソリンスタンドの社会的地位を低いと思っていることを感じ取ってのことであり、その上司は経営者が社会的地位を低いと思っていることを感じ取っているはずです。
そのような連鎖がもたらすものは、上司が己の自尊心を守るために、部下を見下したものの言い方をしたり、顎でこき使ったりすることです。結果として人材は退職し、人手不足に苛まれることとなります。解決策として以下のコラムを参考にして下さい。
社会的地位を気にする店長や店員に経営者はどう接するべきか
残念なガソリンスタンド3:顧客の脅しに屈する本社
上得意先の法人としてそのガソリンスタンドと取引をしていた総合スーパーの部長が、場合によっては取引を切ることを匂わせつつ、自店で販売しているスーツを取り扱って欲しいと要望してきました。
店長が本社に相談したところ、上司は全社員に自腹を切ってスーツを買うように命じました。安いスーツではないですし、現場スタッフはスーツを着る機会もありません。
理に適わない暴挙に出た、その総合スーパーもガソリンスタンド運営会社も今や存在していません。詳しくは以下のコラムをご覧下さい。
チャンスを逃すべくして逃したガソリンスタンド運営会社の末路
残念なガソリンスタンド4:カムバックを促した経営陣が会社を見限る
人材不足に喘いでいたそのガソリンスタンド運営会社の部長は、一旦辞めた社員にカムバックを促すなど、あの手この手で人材をかき集めようと奔走していました。ですが、ある日、その部長自身が突然辞意を表明しました。
退職理由をオープンにしない部長に対して、無理矢理カムバックさせられた社員にしてみると納得がいきません。当然モチベーションも落ちていき、カムバックした社員も退職を余儀なくされ、結果として人手不足は解消されることがありませんでした。
残念なガソリンスタンド5:粉飾決算をした経営者
ある大手企業の子会社の経営者は、洗車機のシャンプーやワックスの在庫を実在庫よりも多く計上すれば、売上原価が小さくなり、粗利が大きくなることに着目し、これを行って業績を良く見せていました。
経営者が粉飾をしていることを現場は知らずとも、その雰囲気は感じるわけで、社内のモラルは大きく低下し、その経営者は退職を余儀なくされました。問題は、そうせざるを得ない状況にした親会社にもあるはずです。詳しくは以下のコラム参考にして下さい。
何故その経営者は架空在庫により売上原価を操作したのか
今回のコラムでは、残念なガソリンスタンドとして、5つの事例をご紹介しました。自店が生き残るために現時点で何をするべきか、検討資料として活用していただければ幸甚です。
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